2024年9月19日、香港メディア・香港01は、中国で3カ月以内に2度発生した日本人襲撃事件について「極端な個別事案で国の健全な発展を阻害してはならない」とする記事を掲載した。
記事は、満州事変のきっかけとなった柳条湖事件が起き、中国では「国辱を忘れてはならない日」とされる9月18日に、広東省深セン市で日本人小学生が襲撃され、翌日死亡する事件が発生したと紹介。特別な日に起きた事件に多くの人が民族ヘイトへの懸念を強めているとした上で「国辱を忘れないことと、今回の日本人小学生に対する暴行事件は、まったく別問題であることをはっきりさせておかなければならない」と主張した。
また、今回の事件が無差別襲撃だったのか、日本人を狙ったものだったのかを特定する証拠はまだ何も見つかっていないとし、「事件は確かに日本人学校付近で起きたものの、被害者が中国と日本の混血であったこと、日本人と中国人の見分けが必ずしも容易でないことを考えれば日本人を狙った犯行と決めつけることはできず、単純に民族憎悪と結びつけるのは不適切だ」と論じた。
さらに、3カ月前の6月24日に蘇州のバス停で起きた日本人親子襲撃事件にも言及しつつ「2つの事件はそれぞれ個別の事案であり、日本人を標的にした一連の事件であることを示す決定的な証拠はなく、事件の背景を民族憎悪のレベルにまで昇華させることはできない」と主張。その一方で、ネット世論では近ごろ排外主義や外国人排斥を主張する書き込みが確かに多いと指摘し、「中国は国を発展する中で狂乱的なポピュリズム(大衆迎合主義)が入り込む余地を与えないよう警戒する必要がある」と指摘している。
そして、民族国家を競争単位とする国際秩序において、適度なナショナリズムは正常な現象であるものの、「他者を誹謗(ひぼう)中傷したり、悪意を持って攻撃するような行動に発展したり、アクセス数や利益を稼ぐために過激な言動をすることは国と国民を誤った方向に導く行為だ」とも指摘。「偏狭で過激なポピュリズムやナショナリズムの高まりは、社会の正常な発展や交流・協力、国民の幸福にとって有害だ」と断じた。
記事は、蘇州と深センで発生した事件について再三「個別事案」であることを強調した上で、「個別事案が中国のイメージと日中関係に悪影響を及ぼすのを防ぐために、中国社会は有力な措置を講じて悲劇の再現を防ぎ、狂乱的なポピュリズムとは一線を画すとともに、さらなる改革開放の中で世界に向けて『狂乱的なポピュリズムは中国社会を代表するものではない』ということを示すべきだ」と結んでいる。(編集・翻訳/川尻)
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