仏国際放送ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)中国語版は20日、広東省深セン市で日本人の男子児童が襲撃され死亡した事件の背景について論じる記事を掲載した。
18日朝、深セン市の日本人学校に登校中だった男児が、学校から200メートルほどの位置で男(44)に刺された。男児は病院に搬送され治療を受けていたが、19日未明に死亡した。男は現地当局に拘束され、取り調べを受けている。
男の犯行動機はまだ明らかにされていないが、RFIの記事は「罪のない子どもを襲撃し、ただ彼が日本人の子孫だからといって手を下すのは、当時のナチスがユダヤ人の子どもだからと焼却炉に投げ込んだのと同じことだ」と指摘した。
また、中国外交部報道官が「個別の事件」「世界のどの国でも起こりうる」と述べたことについて「その言い訳は難しいだろう。少し前に蘇州で日本人の児童が襲撃された。この時は胡友平(フー・ヨウピン)という中国人女性が身をていして守り、彼女は亡くなった。彼女の行いは希望を生んだが、この希望はかつて中国開放の最前線とうたわれた深センという街で、血に染まった」と評した。
記事は、岸田文雄首相がこの事件について「極めて卑劣な犯行」と厳しく非難し、中国側に説明を強く求めたものの、「事件が起きてから1日余りが経過したが、男児が死亡したこと以外はすべてが雲に覆われている」と指摘。6月に蘇州で起きた襲撃事件でも、容疑者は拘束されたが犯行動機などはいまだ不明であり、その前に吉林省で起きた米国人教師らの襲撃事件についても、中国当局は明確な説明を行っていないと指弾した。そして、一部では中国が行ってきた民族主義教育と極めて密接な関係があるとの声も出ているとした。
事件の衝撃が広がる中、在中日本人からは「公共の場で日本語を話すことを控える」「子どもを一人で外出させられない」と懸念の声が上がっている。記事は日本の報道を引用し、蘇州での事件後、複数の日本人が家族を帰国させたり、上海の日本人学校に転籍したりしているほか、中国でスパイ容疑によって日本人が拘束される事例がたびたび発生していると指摘。「中国当局は近年、西側諸国への対抗としてナショナリズム感情を強化しており、新版『反スパイ法』が施行されてから、中国進出を考える人々は懸念を抱いている」と伝えた。
また、中国外交部報道官が「個別の事件」「どこの国でも起こりうる」と言及したことについて、日本の専門家から「この不幸な事件は必然であり、中国当局が日本に対するヘイト教育を行ってきた結果」との声が出ていると紹介。「中国社会に詳しい人たちは以前から、中国では長年の反日教育によって、日本に対して敵意を抱く人が大勢いるということを指摘してきた」とした。
一方で、記事は「今回の事件に際して多くの中国人が怒りと悲しみを表明している」とも言及。深センでは市民が自発的に事件現場に献花をしているとし、献花に訪れたある男性が「これは長期にわたってヘイト教育を続けてきた結果」と語ったこと、現場に手向けられた花束には「ごめんなさい 深セン人より」との文字が書かれていたこと、在中国日本国大使館の微博(ウェイボー)アカウントには哀悼や謝罪、犯人への怒りのコメントが続々と寄せられていることを伝えた。
また、中国のSNS上では「10歳の子どもが倒れた」「蘇州から深センまで、これはもう偶発的な事件ではない」「やつが殺害したのは(国籍は関係なく)深セン人の子どもだ」「亡くなった日本人の子にごめんなさいと言いたい」「地元民として、衝撃と怒りを覚える」といったコメントが寄せられているとした上で、「民間のこれらの意思表示は、だんまりを決め込んでいる中国の官制メディアとは鮮明な対比をなすものだ」と論じた。
記事はこのほか、一部の在日中国人らが共同で声明を発し、「哀悼の意を示すと同時に、われわれはこれらの事件の深い原因をよく知っている。中国では長きにわたり極端な民族主義および仇日教育(日本を無差別的に敵視する教育)が行われており、それが一部の中国人の日本に対する認識を遮り、ひいては漠然と罪悪を放任するに至っている」と指摘したことも併せて伝えている。(翻訳・編集/北田)
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