多くの観光客でにぎわう京都・嵐山のカフェで、菓子専門店『シャトレーゼ』で購入したケーキをそのまま提供しているとの報道があり、物議を醸している。

NEWSポストセブン(9月15日)によると、シャトレーゼで購入できるケーキは300円~350円の価格帯のものが多いが、このカフェでは「飲み物とケーキのセット1580円」で提供しているとし、観光客の話として「直営店での販売価格より高い値段」と紹介している。

さらに、このカフェで提供されているケーキが「弊社の製品で間違いない」「万が一商品管理や提供方法において過ちがありお客さまに多大なご迷惑をおかけするような事態にも繋がりかねず、さらには弊社のブランドを著しく傷つける可能性もある」とシャトレーゼ側がコメントしたという。

ネットでは、「バーで食べる柿ピーやポテトチップスと何が違うの」「定価で買われたのだとしたら、シャトレーゼは何か損したのか」と問題視しない意見がある一方、「食中毒とか発生した際、トラブルに巻き込まれるのは勘弁してほしいだろうね」「シャトレーゼとしては、業務提供前提で店舗販売してないでしょ」といった声もあった。

飲食店やバーなどで、自家製でない既製品をドリンクやおつまみとして提供していることは珍しくない。他社が一般消費者向けに販売するケーキを購入した飲食店が許可なく営業で販売した場合、どんな法的問題があるのだろうか。金田万作弁護士に聞いた。

●他社ケーキ購入→自店舗で販売「特に法的問題はない」

──消費者向けに販売されている飲食物を購入した他の事業者が販売することは、何か法的に問題があるのでしょうか。

一般論としては特に法的問題はありません。

提供(再販売)する際に消費期限などに注意する必要がありますが、バーなどの飲食店でも市販の一般消費者向けの商品(ナッツクラッカーなど)が出される場合と同じです。

自店で作らずにケーキなどを仕入れて提供するというのは、喫茶店・カフェでもありうる話です。

──もし「自家製ケーキ」を謳っていた場合や、「転売しない」ことに同意していた場合はどうでしょうか。

自家製ケーキだと宣伝している場合はお客さんを騙して販売していることになり、「詐欺」や景品表示法違反にあたる可能性があります。

「転売」や「営利目的購入」の禁止に同意した上で購入して転売等している場合は、販売元を騙して購入していることになり、やはり「詐欺」にあたる可能性が出てきます。

──今回のケースが仮に事実だとして、自社商品を他店で無断提供されることに対して、何か法的措置をとることは可能なのでしょうか。また、事前の対策などは何かあるのでしょうか。

法的措置としては、シャトレーゼが対象のカフェにシャトレーゼのケーキの提供(再販売)の差し止めをすることが考えられます。しかし、実際にどこまで厳密に転売禁止の同意を得ていたかなどは不明であり、差し止めまでの措置を取るのは難しいと思います。

事前の対策としては、シャトレーゼが販売する際に、転売禁止等の同意を明確に得るようにすることなどが考えられます。通信販売であれば簡単でしょうし、店舗での販売なら一定量以上の販売に限って同意書を取るなども考えられます。

【取材協力弁護士】
金田 万作(かなだ・まんさく)弁護士
第二東京弁護士会消費者問題対策委員会(電子情報部会・金融部会)に所属。投資被害やクレジット・リース関連など複数の消費者問題に関する弁護団・研究会に参加。ベネッセ情報漏えい事件では自ら原告となり訴訟提起するとともに弁護団も結成している。
事務所名:笠井・金田法律事務所
事務所URL:http://kasai-law.com

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