私が担当している管理職向け研修の中で、Z世代に対するコミュニケーションの難しさを訴える方が沢山います。元気を出させたいと思って、「一緒にもっとがんばろう!」と肩を叩いたら、「それパワハラです」と言われたりとか、先日まで、「この仕事面白いですね!」と言っていた若者が、「もうついていけません」と、急に離職を申し出てきたりとか、例を挙げればキリがありません。今回は、そんなZ世代とのコミュニケーションで、注意すべき点を見ていきましょう!(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)
Z世代の特徴とその思い
厳密な定義はないようですが、Z世代とは、1996年から2012年までに生まれた方とすることが一般的なようです。そして、そのZ世代の特徴としてよく言われるのは、以下のようなものです。
・SNSネイティブで世の中の問題への関心が強い
・仕事よりプライベートを重視
・自分らしさを大切にしている
・人との距離感をある程度保ちたいと思っている
・学びや成長を重視している
・一つの会社で一生働き続ける意思はない
多様性の時代、Z世代と言っても人によって違いがありますので一般化することは危険です。とはいえZ世代は管理職の皆さんとは違った価値観や思いを持っていると考えたほうがいいでしょう。
上司世代が見直すべきコミュニケーションとは
では、そんなZ世代とのコミュニケーションにおいて、どのような点に注意していったらいいのでしょうか? ダメなパターンを5つご紹介します。
1、上司の経験値による一方的なコミュニケーション
管理職は、「俺の若い頃はな……!」とか「こうしなきゃダメだろ!」と言った、上司の経験値を元にした一方的なコミュニケーションの中で、叱られながら育ってきたのではないでしょうか。
しかし、Z世代の受けてきた教育は、“暗記教育ではなく自分で考える教育”です。上記のようなコミュニケーションは、これとは真逆のコミュニケーションになってしまいますので、Z世代の共感を得られることは少ないでしょう。
2、精神論をベースとしたコミュニケーション
巨人の星のようなスポ根アニメが象徴する“ど根性論”。「頑張れば、なんとかなる!」「根性が足りないぞ!」といったコミュニケーションは、高度経済成長時代のような右肩上がりの時代には通用しましたが、低成長時代の今には「ほんとに?」といった疑問しか生み出しません。
根性論的コミュニケーションには論理性がなく、やることの意義や意味を求めるZ世代に対しては、全く伝わらないと思ったほうがいいでしょう。
3、否定から入るコミュニケーション
昔は、上司に報連相をするたびに、「それは違う!」「ちゃんと考えたのか!」「そのやり方ではなく、俺の言った通りにやれ!」とひたすら否定されたものです。しかし、叱られることに慣れていないZ世代にとって、これらのコミュニケーションは屈辱以外の何者でもありません。否定から入るコミュニケーションは、Z世代との距離をますます広げてしまいます。
4、夢も希望もない愚痴飲みにケーション
昭和から平成の時代の飲みにケーションでは、上司から会社の愚痴を聞くことも多かったかもしれません。しかし、それでも高度経済成長の時代は多くの会社は右肩上がり、人々の生活も豊かになっていきました。
そんな中での愚痴コミュニケーションは、かつては許容できましたが、先行き不透明な現代では不安しか生み出しません。会社での仕事を通して社会に貢献するとともに自身の成長を感じたいZ世代にとっては、離職を考えるきっかけになってしまいます。飲み会の際の愚痴には気をつけましょう。
5、決めつけコミュニケーション
画一性の高い時代に生きた管理職にとって、多様性を理解することは、頭では理解していてもなかなか受け止めることができないようです。つい「今の若者は打たれ弱い」とか、「今時の若者は、〇〇だから」といったコミュニケーションをしてしまいがちです。これらの決めつけは、自分らしさを大切にしたいZ世代にとっては、上司への不信感しか生み出しません。上司自身が固定観念を超えて多様な価値観に共感していかなければ、Z世代との信頼関係は醸成されないでしょう。
以上、今回はZ世代との距離を遠ざける昭和すぎるコミュニケーションについて紹介してまいりました。マネジメントの基本は「何を言うかではなく、誰が言うか」にかかっています。昭和すぎるコミュニケーションに注意しながら、Z世代との信頼関係構築にお役立てください。
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