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電動キックボードなどのシェアサービス「LUUP」のポート(貸出返却ができる場所)の一部が、「消防法違反では?」という指摘がSNSでされている。
地震や火災などが発生した時、建物から脱出するため、建物によって避難はしごなどの避難器具を設置するよう消防法で細かく義務付けられている。
しかし、ホテルやマンションの上階から脱出するための避難器具降下地点付近にポートが設置されている事例が複数、SNSで報告されている。避難器具降下地点には、「この付近に物を置かないでください」と注意書きされたケースもあり、SNSでは「火事が起きた時に危ない」「ルールは守ってほしい」といった批判が強まっている。
また、中には避難器具だけでなく、消火活動に必要な送水口や消火器に近接する形でポートが設置されているケースも投稿されている。
弁護士ドットコムニュースの取材に対し、サービスを運営している株式会社Luupは、こうしたケースがあることは事実であると認め、「速やかに適切な対応を行ってまいります」と回答している。
●「小さなスペースも利用できる」を売りに9900カ所に設置「導入コスト0で設置可能!
必要なのはスペースの確保のみ
設置作業はもちろん、バッテリー交換・車両の整備、事故/盗難対応・その他ユーザー対応は全てLUUPが行います。電気代の負担もございません」
同社のサイトには、ポートの設置についてこう書かれている。店舗やマンションの小さな空きスペースも利用できることもあり、現在までに約9900カ所にポートが設置されているという。
同社によると、ポート設置について現在は「避難設備などの使用に支障のある場所には設置しない」というルールがあるというが、なぜ、こうしたことが起きてしまったのか。
同社は取材に対し、「様々な要因がございますので、一概には申し上げられませんが、今後も管理会社様やオーナー様と密に連携の上、ポート導入施設の皆さま、近隣住民の皆さまに安心してLUUPを導入・ご利用いただけるようなポートの設置や点検を進めてまいります」と答えている。
なお、避難器具の降下地点にポートが設置されている場所の数は明らかにしていない。
また、SNSで拡散されているこのポートについて、同社は次のようにコメントを寄せた。
「こちらのポートに関しては、避難器具の実際の位置と、『避難器具降下地点』の表示がそもそも離れており、実際には避難器具の使用には支障が無いことを消防局様、管理会社様と確認しております。
また、避難器具の使用に支障はないものの、降下地点表示の視認を妨げていたことからマンション入居者の方や地域住民の方へご懸念やご心配を感じさせないよう看板の撤去を行い、その旨についても消防局様、管理会社様に共有しております」
●避難器具の降下空間について細かく規定消防法や消防法施行令などに基づき、建物の規模に応じて、避難器具設置について細かく指示されている。
弁護士ドットコムニュースが消防庁に取材したところ、避難器具については、消防法施行規則(27条)で避難器具の種別ごとにどのように設置するか細かく決められているという。また、降下地点については、告示である「避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目」(1996年)で避難上必要なものとして、避難器具が降下する空間の確保を求めており、避難器具によって、確保しなければならない空間の広さも細かく指示されている。
消防庁予防課の担当者は次のように説明する。
「消防署ではどのような建物でも10年などのサイクルで立入検査をおこなっています。そうした時に、たとえば降下空間にものが置いてあった場合は、法令違反になるのでどかしてくださいという指導をします。もしそれで対応しない場合は、命令を下します。それでも撤去されない場合は裁判所に告発する流れになります」(消防庁予防課)
また、避難経路に物が置かれるケースについて、「望ましくはありませんが、無意識にやってしまうことはあります。多くの方に、防災に対する意識を持っていただき、法令上だめな場合については、指導を守っていただければと思います」と話している。
●Luup社「ご指摘を真摯に受け止める」弁護士ドットコムニュースの取材に対し、同社は次のようにコメントした。
「ポート場所の選定は、当該物件のオーナー様や管理会社様、当社担当者等で協議の上で実施しておりますが、ご指摘いただいたような一部のポート設置場所の見落としについては、弊社巡回時や管理会社様やオーナー様での点検時に発覚するケースがあり、また消防署からの指導に則り対応を行ったケースもございます。発覚した場合は速やかに適切な対応を行ってまいります。
この度のご指摘を真摯に受け止め、これまで以上に、ポート導入施設の皆さま、近隣住民の皆さまに安心してLUUPを導入・ご利用いただけるようなポートの設置を進めてまいります」
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