基礎生物学研究所は10月11日、海産動物の「クシクラゲ」の2個体が融合して、1個体のように振る舞う現象を確認したと発表した。体の一部が傷ついた2個体のクシクラゲを用意し、一晩たったあとに確認すると、高確率で融合個体を作成できたという。
クシクラゲは「クラゲ」と名前に付いているが、刺胞動物のクラゲ類とは別のグループに属する。クシクラゲは「有櫛(ゆうしつ)動物」に属し、地球上に現存する全ての動物の中で“最も原始的な動物群”といわれている。一方で、高度な神経系や筋肉、消化器を持つなど、さまざまな生理学的な振る舞いも示すという。
今回、ある研究員がクシクラゲの一種「Mnemiopsis leidyi」(ムネミオプシス・レイディ)を入れていた水槽で、口を2つ持つ異様に大きな個体を偶然発見した。これを見た研究員たちは「別々の2個体が1個体に融合したのでは」と推測。さまざまな実験をしたところ、体の一部を切除した2個体を、切除部分が接触するようにピンで固定し一晩静置させることで、高確率で融合個体を作成できると分かった。
融合現象がどのように起こっているか観察するため、顕微鏡下で融合過程をタイムラプス撮影した。実験開始から約30分後、2個体の切除部分が徐々に癒着し始め、1時間後にはその境界はほとんど見分けがつかないほどに融合が進んだ。その後、徐々に両者の筋収縮が同期し、2時間後には同期率が9割に達したという。
融合個体を顕微鏡で観察すると、それらの消化管がつながっていることが確認できた。融合後のクシクラゲの“片側の個体の口”から蛍光物質で色付けしたえさを与えたところ、片側の個体で消化が進んだ後、融合した消化管を通り、もう片側の消化管へと移動。最終的には“えさを与えていない個体側”の肛門から糞を排出した。
研究チームの1人である城倉圭研究員は「今回の実験で融合が高確率で起こったことから、クシクラゲが自己と非自己を区別するためのメカニズムを持っていない可能性が考えられる」と説明。今後も研究を進め、融合の分子メカニズムに迫りたいとしている。
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