デル・テクノロジーズ(デル)は、企業ユーザーがAI、エッジ、マルチクラウドなどのイノベーションを促進するための共創と学びの場「Solution Center AI Innovation Lab」を、東京・大手町の本社に開設した。記者会見した大塚俊彦社長は同社の4つの特徴を挙げ、今後は同施設を活用して、顧客に対して手厚いAIソリューションを提供していきたい考えを示した。
●大塚社長が語る「4つの強み」とは?
大塚社長は「当社はこれまで顧客に、実践的なアプローチによってソリューションを提供してきました」と話し「4つの強み」を強調した。
1つ目は、エンドツーエンド(上流から下流まで)の製品群を1社で持っていて、AIでもサーバからストレージ、ネットワーキングまで提供できること、2つ目として世界中にサプライチェーンを築いているため、最適なサービスを受けられることを挙げた。3つ目に世界中に直接的に顧客を支援できる営業チームがいること、4つ目は顧客システムの安定稼働のためにチームでサポートできることだという。
●大半の企業が「初期の実装段階」
生成AIの登場により、日本企業のビジネス現場ではAIを活用して業務を効率化しようという動きが急速に拡大している。デルが2月に全世界で実施した調査によると、日本の回答者の70%が、生成AIを含むAIが将来的に幅広い業界に大きな変革を起こすと考えていることが明らかになった。
しかし、その一方で、実際に企業がビジネスでAIを活用するとなると「使い方を明確化できない」「データの質と量の把握が難しい」「社員のリテラシースキル不足」など課題が多いのが現実だ。このため、ほとんどの組織は生成AIを十分に使うことができず実装の初期段階にとどまっていて、イノベーションにつながらないことが課題となっている。
これを解決するために同社は5月「Dell Al Factory構想」を展開。構想を具体化するために同施設を本社のあるビル内のフロアに設置した。本社オフィス約1100坪のうち、半分近いスペースをこのラボに充てるという。ラボでは世界中の具体的な事例を産業別に集めて、目的に応じて紹介するほか、実証実験やデモを実施できる。このラボは同社としてはグローバルで初めてAIに特化した施設だ。米ニューヨークやシンガポールにあるデルのInnovation Labとも連携しているという。
AI Innovation Labでは、実証された具体的な事例をショーケースとして展示している。例えば部品を組み立てる製造ライン現場で、部品がミスなく組み立てられるかどうか、金融領域のコールセンターでAIを活用して顧客の待ち時間を減らせた事例、顔認証技術を活用した顧客管理システム、大腸がんの画像診断システム、コンビニの店頭や物流の効率配送など幅広いビジネス領域での事例があった。生成AIの導入を検討している企業にとっては参考になりそうだ。
●中堅企業も積極的サポート
同社は共創・オープンエコシステムをビジョンとして掲げている。顧客である「AIエコシステムパートナー」には、デルのスタッフが最適なソリューションスタックを作り、効果的なイノベーションの実現を目指すとしている。
人材不足のため、なかなかAIを実装できないでいる中小企業のためには、中堅企業向けDXプログラム「DXイノベーションコネクト」を展開。大企業と中堅企業が協力し、革新的なプロジェクトやイニシアチブを共同で実現するプラットフォームを提案している。「ローカル生成AI」を実現するパッケージを含む5つのプログラムを提供し、中堅中小企業を積極的に支援していく考えだ。
人材育成プログラムの「デル・テクノロジーズ・アカデミー」では、AIの基礎からデータサイエンスなどキャリア形成に必要なスキル、知識の構築を支援する。顧客のAI人材の育成を積極的に支援する方針で、デル・テクノロジーズのプログラムにより、共に学び、社会に貢献していくという。
デル・テクノロジーズは米国に本社があるデルの日本法人だ。PCからサーバ、ストレージ、ネットワークまで幅広いIT領域のサービスを提供している。PCでは「レノボ」「ヒューレット・パッカード(HP)」などと並んで、世界屈指のPCベンダーといえる。
この数年は、AIの進化に合わせて生成AIに関連したサービスも拡大させていて、競争が激化する中で「デル」のネームバリューを生かして売り上げを伸ばしてきている。そうした中で、デルは本社のある大手町に、AI関連市場を勝ち取る手段として「AI Innovation Lab」を開設、成功事例をショーケースとして見せることで新たな顧客を呼び込もうとしている。
(中西享、アイティメディア今野大一)
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