プロジェクトを始める際、まずはキックオフ・ミーティングを行ないます。ここではプロジェクトマネージャーがメンバーにプロジェクトの目的やチームの役割、スケジュールの確認などをしていきます。大ヒットゲーム機「PlayStation」を世に送り出した当時のプロジェクトマネージャーが、キックオフ・ミーティングから伝え続けたこととは? 小山透氏の著書『常勝! プロジェクトを成功に導くマネジメントの定石 立ちはだかる壁を乗り越えるプロジェクト成功の鍵とは』(ごきげんビジネス出版 ブランディング)よりみていきましょう。

「キックオフ・ミーティング」で最高のスタートダッシュをする方法

プロジェクトがスタートしたことを、プロジェクト関係者(ステークホルダー)にどうやって伝えればよいでしょうか。

プロジェクトのキックオフとは、プロジェクトを公式に始動させることであり、立ち上げ時の早い段階で「プロジェクト・キックオフ・ミーティング」を開催します。ステークホルダーを招集し、プロジェクト・マネジャーがプロジェクトの目的や目標などの重要事項、チームの役割や作業分担、およびメンバー紹介などを行ないます。プロジェクトの目標を達成するために、メンバーと使命感や一体感を共有し、同じ目標に向かって突き進むためのチームづくりの場です。

プロジェクトはさまざまな組織からメンバーが招集されます。プロジェクトの生産性を上げるうえで、チームビルディングは不可欠な要素となります。チームビルディングとはメンバーの能力や経験を最大限に引き出し、高いパフォーマンスを上げるチームをつくることです。キックオフはチームビルディングの第一歩といえるでしょう。

プロジェクト・マネジャーは、これからスタートするプロジェクトの概要を説明します。説明する項目は次のとおりです。

●プロジェクト発足の背景 ●プロジェクトの目的や目標 ●開発製品の概要 ●プロジェクトの概略スケジュール ●プロジェクトの概略予算 ●プロジェクト体制 ●制約条件や前提条件 など

プロジェクトの多くは、スタート時にスコープが明確になっていなかったり、要員の確保が整っていなかったり、スケジュールが確定していなかったりします。このような場合、プロジェクト・マネジャーは、ついキックオフ・ミーティングの開催を見送りたくなりますが、開催を省いてはいけません。プロジェクト関係者が一堂に会して、プロジェクトに期待される情報を共有することで、参画意識が高まるでしょう。また、プロジェクト・マネジャーは自分自身の意気込みや決意表明を行なうことで指導力を発揮できます。

プロジェクト・マネジャーキックオフ・ミーティングにおいて、これから開発する製品の市場ニーズや製品概要などを説明します。このときに、その製品に託した自分の夢を語りましょう。

プロジェクトには明確・妥当な「目的」が必要不可欠

PlayStationの生みの親である久夛良木健氏(元株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント代表取締役社長)は、「これからは、デジタル技術の時代がくる」と主張していました。当時はまだ「アナログ時代」であり、デジタル技術を主張する久夛氏は「ソニーの異端児」として扱われていたのです。その後、技術はアナログ時代からデジタル時代へと急激に加速し、「大人もゲーム機で遊びたい」とデジタル技術を駆使した高精細なテレビゲームの夢が叶えられました。一方で、プロジェクトの「目的」を見失う場面が見受けられます。「目標」は「目的」を達成するための手段です。あなたのプロジェクトは、目標が目的になっていませんか。

「夢の超特急!リニア中央新幹線プロジェクト」の目的を考えてみましょう。一般的な目的は、次とされています。「現在の東海道新幹線は、1954年の開業以来50年以上が経過し、将来的に大規模修理が必要となります。しかし、新幹線の営業時間は、午前6時から深夜24時なので、保守時間は深夜24時から午前6時の間しかなく、大規模修理は困難です。そのために、リニア中央新幹線を新規に建設します」とされています。

超電導リニアによって東京・大阪間を結ぶ新たな新幹線リニア中央新幹線」の整備が進むものの、静岡県から着工を認められず、JR東海リニア中央新幹線2027年の開業を断念した。

しかし、この目的だと目標に疑問がわいてきます。リニア中央新幹線でなくても、従来の新幹線をもうひとつつくればよいのではないでしょうか。現時点では、リニア中央新幹線をつくることが目的になってしまっているようにも見えてしまいます。

小山 透 プロジェクトマネジメント・エバンジェリスト

※本記事は『常勝! プロジェクトを成功に導くマネジメントの定石 立ちはだかる壁を乗り越えるプロジェクト成功の鍵とは』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

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