朝ドラ「まれ」(NHK 月〜土 朝8時〜)6月27日(土)放送 第13週「運命カカオ64%」第78話より。脚本:篠崎絵里子(崎の大は立) 演出: 川上剛

あわや日の目を見ないことになりそうだった希(土屋太鳳)と圭太(山崎賢人/崎の大は立)のフランス菓子と蒔地のコラボが、「あの蒔地には輪島塗への思いがつまっとるんです」と2回繰り返すほどの希の根性とアイデアと味覚、そして陶子がついに見せつけたスーシェフだけはある知識と技術によって、みごとに再起しました。
大悟(小日向文世)によるまんで華やかな輪島塗とケーキのコラボと比べると、蒔地とチョコレートケーキは、徹(大泉洋)が「茶色いな」としか感想を言えないくらいの地味さ。そのわりには、金色をあしらったシックな上品さでかなりいい感じでしたけれど。

あたまに白いタオルを巻いて、希たちのケーキづくりを手伝う姿がかっこいい圭太。圭太のためにケーキをもう一度つくる希のじつに生き生きとした表情。
結果的に、希は彼の職人としてのプライドを守ったのです。
チョコケーキの名前フィエルテはフランス語で「プライド」の意味で、希が圭太に合うと思って選んだもので、やっぱり希は良妻の素質あり? 自分の夢より他人の夢の応援になるとがぜん力を発揮するところが彼女らしさのようです。

障害を乗り越えたふたりの恋


無事、展示会が終わり、高志(渡辺大知)のライブがはじまります。
新曲のラブソングを聴きながら、希はずうっとしまっていた気持ちをついに圭太へ・・・。
「圭太が好きや。どうしても忘れられん。好きや」
高低差のある希と圭太のキスシーンが、障害を乗り越えたふたりの恋の初々しさ感じさせます。
この至福感、渡辺大知の歌の力が大きい。彼はほとんど出番も台詞もないのに、ここぞというときに場の空気を支配する。ああ、すごいなあ、と思うほど、大輔(柳楽優弥)とはいったいなんだったんだ・・・と天才的俳優・柳楽くんが東幹久のような存在になっていることに残念さを覚えるのでした。芝居がちゃんとしているからこそ、もっと彼の才能が発揮できる役をやってほしいと思ってしまうわけです。いやいや、大輔に恋のレッスンをしてもらっていなければ、希は恋する気持ちを自覚してちゃんと口に出すことはできなかったでしょう。そして、柳楽くんほどの俳優が噛ませ犬だったからこそ、最後まで圭太と大輔どっちを選ぶかハラハラした(これが東幹久だとすぐ展開がわかっちゃう)のです。そう言い聞かせながら見た13週の終わりでした。

今日の、勝手に名言


もうやだこういう根性勝負」(陶子)
そう叫びながらもケーキを作り直した陶子。展示会では「あしたのジョー」(11年)のように真っ白に燃え尽きていました。脚本の篠崎絵里子が映画「あしたのジョー」の脚本も書いていたつながりでしょうか。照明が崩れ落ちた陶子を白っぽく当てていましたね。
(木俣冬)

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いまひとつ視聴率が伸びないが、奮闘は讃えたい。NHK朝ドラ「まれ」おさらい(54話までを総括))
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