北朝鮮兵士のロシア派遣が現実味を帯びつつある中、北朝鮮国内では、兵士が「日々の生活」いう現実との熾烈な戦闘を繰り広げている。
平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋は、道内の大同(テドン)郡にある長山(チャンサン)炭鉱で9月中旬に起きた事件を伝えた。
炭鉱の周囲の山は、北朝鮮では珍しく鬱蒼とした森になっている。この季節になるとドングリや五味子などの木の実が多く成り、人々が拾いに集まる。炭鉱で働く元軍人のAさんは、生活の足しにしようと夜勤を終えた後、休まずに山に登ってドングリ集めに精を出していた。
そこへ現れたのは現役の兵士2人だった。彼らはAさんが必死で集めたドングリをリュックごと奪おうとした。しかしAさんは抵抗し、通りがかりにその様子を目撃したBさんも加勢し、兵士2人を叩きのめして気絶させた。実はBさん、以前に強盗被害に遭ったことがあるという。
この季節になると、強盗が現れると情報筋は嘆いた。
「長山炭鉱の近隣では、毎年この時期になると山に入って木の実や薬草を取って、生活の足しにしようとするが、そのたびに『土匪』の連中がやってくる。それは人民軍の兵士だ」
この「土匪」とは、空腹に耐えかねて、民間人を襲撃して食べ物などを奪い取る兵士を指す蔑称だ。
なお、この地域には、朝鮮人民軍の特殊部隊・第11軍団、通称「暴風軍団」の武器庫などの施設がある。ウクライナ派兵のためロシアへ送られたのも、この部隊と見られている。
特殊部隊というおどろおどろしさとは真逆に、地元でやっていることは非常にセコい。民間人が軍事地域に入り、木の実をリュックいっぱいに詰めて出てくるのを見計らって襲撃し、それを奪うのだ。
地域住民の恨みは深く、兵士にやられるだけやられて黙っているわけではない。今回もその恨みを晴らした形だ。
兵士2人が民間人からドングリを奪おうとして叩きのめされて気絶した噂は、あっという間に地域社会に広がり、「痛快だ」とのリアクションが出ているという。
一方、別の兵士たちは、報復のために、兵士2人に手を出したのか誰なのかをあちこちで聞き回っているという。
コメント