『遊戯王オフィシャルカードゲーム(OCG)』のようにコンボを狙いつつ、『マーベル・スナップ』のように相手の狙いを潰す、対戦の駆け引きがヤミツキだ。そう聞けば新作カードゲームの話だと思うだろう。いいや、新作オートチェスの話である。
【画像】コンボを狙いつつ、相手の狙いを潰す対戦の駆け引きがヤミツキ必至の新機軸オートチェス『Mechabellum』
『Mechabellum』はロボットや戦車を並べた無人機軍団で相手の軍団を撃破する対戦型ゲームだ。ビジュアルは『スター・ウォーズ エピソード1』の戦争シーン(ナブーの戦い)に近い。あのバトルドロイド軍団、もっとうまく戦えたのではないか? そう思ったことがあるなら本作で采配をとってみよう。
ジャンル「オートチェス」は名前のとおり、戦闘を自動で解決するストラテジーゲームである。昔からある自動戦闘ストラテジーにランダムピックとラウンド制を採用し、近年流行したジャンルだ。本作の試合展開はオートチェスにのっとるが、バトルフィールドはミリタリーSF調で見た目が大きく違う。
小型メカの群れ、多脚戦車、巨大ロボ、ほかにも飛行メカや洗脳ロボ。ドリルや火炎放射、ミサイルやビーム、さらには核弾頭。ド派手な戦闘シーンを楽しめるウォーシミュレーションなのだ。プレイ感を人気カードゲームで例えたが、どう見ても遊戯王やマベスナには似ていない。そこに共通する“勝利の方程式”こそが、本作のヤミツキポイントだと断言しよう。
■コレで必殺のコンボが完成する
『Mechabellum』のメインコンテンツはオンライン・マルチプレイ対戦だ。しかしオートチェスの他作品と毛色が異なる。まずは準備運動としてサバイバルモードをオススメしたい。時間無制限のシングルプレイゆえ、気兼ねなくじっくり考えてプレイできる。ユニット相性の有利・不利が分かると、のめり込むのは時間の問題だ。
試合は配置フェイズと戦闘フェイズからなるラウンドを繰り返し、規定ラウンドまで生き残れば勝利となる。サバイバルモードでは敵側の配置が見えるので有利なユニットを配置すればいい。なにが有利かを学ぶのに「自習」を要するが、説得力があるビジュアルのおかげでコツはつかみやすい。
本作はオートチェスの他作品と比べても戦闘描写が豪華だ。戦闘フェイズでカメラを動かせばSF映画の戦争シーンが撮れるぞ。プレイヤーが采配したとおりに、鈍足の一団を迫撃砲で蹴散らすとうれしい。その迫撃砲が飛行ロボになすすべなく壊されるのは悲しい。うれしさや悲しさはユニット相性から生まれ、配置フェイズのワクワク感や、戦闘フェイズのドキドキ感につながっている。
それではお待ちかね、コンボの時間だ。ゲームメイクの主軸は弱点を補い合うユニット種を並べて、強力なコンビを組む配置にある。つまりシナジーを求めるゲームだが、試合中に購入するアビリティでシナジーが爆増するのだ。唐突に死を投げ込む遊戯王めいたコンボが決まったそのとき、ゲームにのめり込めたと自覚するだろう。
■戦術は騙してナンボの商売だ
サバイバルモードは本作をパズルゲーム的に遊べる。ユーザー投稿ステージもあり、パズル攻略を突き詰めるのも楽しい。それらシングルプレイのコンテンツは難度がやや高く、しばらく遊べば「対戦のほうがカンタンなのでは?」と感じるかもしれない。対人戦デビューの準備が整ったと思えばいいだろう。
マルチプレイの配置フェーズ。戦場の暗い箇所は相手陣地で、以前ラウンドの情報のみ表示する。現ラウンドのアクションは伏せてある。相手も同じ条件だ。
対戦モードは相手の狙いを予測するのが大事だ。配置フェイズで見える相手陣地は前ラウンドまでの配置位置である。そして現ラウンドで追加したユニットのみ配置位置を選べる。そのユニット配置にはコストを要し、1ラウンド中に2個までという制限がある。ここが駆け引きのポイントだ。選択肢は多いが手数は少ない。有利相性をぶつけるか、コンボを狙うか。ここも「自習」を要するポイントだ。ゲーム機能の試合観戦で他プレイヤーを見て学ぶのをオススメしたい。
戦線の押し引きが考え方のとっかかりになろう。押された戦線を押し返すか。押している戦線をさらに押すか。これはマベスナでカードを置くときの考え方に近い。ユニット配置にはコストがかかるので、ラウンドごとにランダム4種からピックする強化オプションを活用しよう。この強化オプションを軸に考えると相手の狙いを予測しやすくなるのも、よく練ったバトルデザインだと感じた。
対空がない相手に飛行ユニットを出し、次ラウンドで相手が出す対空ユニットに対策をかぶせる。戦線の押し合いに意地を張らず、早いラウンドでコンボ完成を狙う。こうした濃厚な思考戦を味わえるのが『Mechabellum』の対人戦だ。1マッチが10~20分で決着する手軽さのおかげで、つい、もう1回遊びたくなる。
■ロマンあふれるオートチェス
『Mechabellum』はオートチェスの様式で遊ぶウォーシミュレーションだ。試合序盤はマベスナのように騙し合い、中盤は遊戯王のようにコンボを狙う。ここで決着がつかず終盤までもつれ込むと、大小のユニットが複雑に絡み合う本作ならではの戦列となる。その戦列が出来上がる戦争を試合中に味わっているのだから、ロマンを感じるに違いない。そう、戦列とは戦史そのものなのだ。プレイ動機にしたくなるロマンではないか。
本作の明確な欠点は、ゲームに熟練するまでのプレイ動機が弱い点にある。全ユニットの長所・短所を学べるキャンペーンモードがない。ストーリーもなく、プレイヤーが無人兵器同士の模擬戦に興味を持つ仕掛けに乏しい。本稿で繰り返し述べたように「自習」を要するのが欠点だが、勝ち方を考える遊びだと思えるゲーマーには喜ばしいものとなろう。
ストラテジーにはルールを覚える楽しさと、覚えた後の楽しさがある。競技志向が高い=自習を楽しめるゲーマーには覚えた後も楽しさがつづくと請け合おう。本格派ストラテジーで対戦したいが、プロ競技のリアルタイムストラテジーはちょっと……という人は、本作をぜひ手にしてもらいたい。過去にオートチェスで夢中になった人にはいうまでもない。『Mechabellum』は注目のジャンル最新作だ。
(文=野村光)
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