神保町よしもと漫才劇場に所属し、「M-1グランプリ2023」では準決勝進出&敗者復活戦3位という結果で注目を浴びたお笑いコンビ・ナイチンゲールダンスのヤス。“尖り芸人”と呼ばれた過去もあるが、その素顔は「真っすぐで熱い男」だ。そんな彼が日々感じたことを書き綴る連載「ヤスのコラム」。

【写真】お笑いコンビ・ナイチンゲールダンスのヤス

■第8回「なんで芸人ってコンビでご飯行かないの?」

ヤスです。

長年、なぜか芸人が聞かれ続けてきたこの質問への自分なりのアンサーが出来たので書きます。

「コンビでご飯とか行かないの?」

この質問を、我々芸人は普段お笑い見ない人から割と見てるはずの人まで幅広く生涯聞かれ続けます。その度に僕たち芸人は「はあ?まじかこいつ」という気持ちを抑えて「いやーなかなか行かないですねー、はっはっは」と答えます。

そしたら大体「え?仲悪いの?」と聞かれます。それに対して「いや、仲悪いとかじゃないんですけど、はっはっは」と答えると、「ふーん」となんか腑に落ちないみたいな顔してどっか行きます。

全然このコラム見てる人の中にも「え、私も行くと思ってた」なんて人いると思います。ではなぜコンビでご飯に行かないか、僕なりのアンサーを出します。

結論から言うと僕たちは「会話」が仕事だからです。

かっこいいですね。自分で書いてて一回空見上げました。でも本当に芸人って日常生活でしゃべってる時も意識的に、もしくは無意識にボケたりツッコンだりノッたり例えたり喧嘩くだりしたりを繰り返してます。これが楽屋とかで相方以外と、となるとそりゃ楽しいです。全員結局しゃべるのは好きなので。

ただここで、年間800ステージ一緒に出てその間もあれやこれやネタ揉んでYouTubeの企画、スケジュール管理、そしてコンビとして人生の方向性の決定などなどをずーーーっとやり続けてる職場の人、つまり相方だと話は変わってきます。

会話は芸人の仕事なので、もし仮に他の芸人も連れて相方と一緒にご飯行ったとしても、せっかく仕事以外の場所なのに「今のこいつの話もうちょいわかりやすい入り方あったんじゃないか?」とか「うわ、エピソードオーディションでもハマったことないじゃん」とか無意識に考えながらご飯を食べることになるのです。これは本当にしんどい。

しかも食レポとかもそうなんですけど、仕事で飯食ってる時っていつも以上に味しないですよね。なんでかは分かりません、ただ仕事っぽくなることによってご飯自体に集中出来なくなります、少なくとも僕は。

だいぶ溜まってたので大吐き出しして、読んでくれているあなたは目回ってるかもしれませんが、これが相方とご飯行かない理由です。仲悪い・悪くないは関係ないです、常に仕事する?しない?っていう話です。

もしあなたが知り合いの芸人さんに「どうしてコンビでご飯行かないんですか?」って聞いてしまったことがあるなら、それは「どうしてやる必要のない残業をしないんですか?」と聞いてるのとほぼ同じです。残業代ください。

そしてこの話題の先に僕が言いたかったことがあって、もしあなたに推しのコンビがいて、なんか一緒にご飯とか行かないらしいし、最近あんまり2人でしゃべってるのを見ないので不安。ネタ終わりに言い争ってるらしいというのを他のコンビから聞いた。ほんと不安。

これむしろ健全です。お互いの言いたいこと言えてるだけです。というか賞レースやテレビで結果を残す芸人でネタ終わりに本気の言い合いしてない芸人見たことないです。お互いの意見を言えずになあなあでコンビ組んでる芸人から解散していきます。普段から吐き出してないから。口を出すのは相手を諦めてないから。

もしこれを簡単に不仲とくくる方がいたらこう言ってあげてください、あなた「ぬるい」ですね?

みんながなりたい仕事で飯食えてる幸せを感じながら今日も元気働きます。まあ相方と飯は食いませんが。

「ヤスのコラム」/ 撮影=booro