かつてお笑いネタだった「赤信号、みんなで渡れば怖くない」というフレーズは、いつの間にかことわざ扱いされて辞書にも掲載されるようになっていたらしい。

 だが実際には赤信号は停止するというのがルールであり、日本をはじめとする諸外国では歩行者の信号無視は交通違反に当たる。

 だがアメリカのニューヨーク州、ニューヨーク市では、事実上、歩行者の信号無視は違反じゃなくなったそうだ。(ただし車の信号無視は当然違反)

 その理由を詳しく見ていこう。

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歩行者の信号無視は違反だが、ほとんどがスルーされていた

 歩行者が、赤信号を無視したり、横断歩道のない道路を渡ったりといった行為は「ジェイウォーキング(Jaywalking)」と呼ばれ、アメリカではこの行為は交通違反にあたり、罰金などが科される地域が多い。

 ニューヨーク市でも現行法では違法となり、もし違反すると最高で300ドル(約46,000円)の罰金が科されることになる。

 だがこの法律はほとんど形骸化しており、むしろ守る人の方が少数派だ。ニューヨーカーが赤信号の交差点を渡り、横断歩道のない道路も渡るのが日常の風景となっている。

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 だが取り締まりがまったく行われないわけではない。しかし実状はといえば、警察官の点数稼ぎや別件逮捕のような側面で使われることが多かったという。

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人種問題が絡んでいた

 ほとんどがスルーされているのが現状だが、中には摘発される人もいる。

2023年にジェイウォーキングで発行された召喚状463枚のうち、92%が黒人かラテン系に対してのものでした。白人だって信号無視をたくさんしているのに、ですよ

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 アメリカで社会問題を風刺する漫画を執筆しているルーベン・ボリングさんは、この事態に対しこのようにコメントしている。

誰でもやっていることが犯罪とされると、警察官に不健全なほどの執行裁量権が与えられることになるのです

 警察が取り締りの対象としているのは有色人種に偏っているというのだ。

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改善なのか改悪なのか意見は分かれる

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 現行の法律は1958年に制定されたもので、今の現実にはそぐわないという声が上がっていた。

 今回の法案を提出した、ブルックリンの市議会議員メルセデス・ナルシスは、法改正の意義を次のように説明する。

この法律は、指定された横断歩道の外側で道路を横断することや、交通信号に従わずに横断することを非犯罪化するものです。

現実的に考えれば、ニューヨーカーは皆、信号無視をしています。人々はただ、行きたい場所にたどり着こうとしているだけなんです。

日常の移動における一般的な行為を罰する法律は、特にそれが有色人種のコミュニティに不当な影響を与える場合、存在すべきではありません

 新しい法律は市の行政規則を改正し、歩行者が信号に反して、任意の地点で道路を横断できるようにした。

 ただし、信号無視を選択する歩行者優先権が与えられるわけではない。

 歩行者は依然として交通標識や規則に従い、対向車に注意して通行することが求められている。

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 市の広報担当者リズ・ガルシアさんは、声明の中で以下のように説明している。

交通規則を皆が守ることで、すべての道路利用者がより安全になります。私たちは歩行者横断歩道を渡り、歩行者信号機に従うなど、安全対策を活用するよう引き続き推奨しています

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 もちろん、議会の全員がこの法案の成立に賛成したわけではない。市はこれまでにも2回、同様の法案の施行を目指してきたが、どちらも廃案になっていた。

 クイーンズ選出のジョアンアリオラ議員は、この法案を「ばかげている」と評している。

毎年続く歩行者の死亡者数を考えると、これが良いアイデアだなんて誰が思えるでしょうか。さらに多くの歩行者を危険にさらすだけです

 とはいえ、この法案は9月30日に可決され、その120日後に施行されることが決定した。

州や都市によっても異なるアメリカの交通ルール

 このようなジェイウォーキングの合法化は、実は全米の他の州や都市でも既に実施されているところがあるそうだ。

 アメリカでは州によっても法律が違うので、街歩きをする際は現地の法律にも気をつけた方が良いだろう。

 例えばハワイ州では、横断中にスマホを見るのは禁止。また、信号無視はもちろん、歩行者信号機が点滅を始めたら渡ってはいけないとされている。

 ところが日本人観光客は、点滅すると慌てて渡り始めるので、「日本人観光客を狙い撃ちしたネズミ捕り」が行われているとの説もある。

 ちなみに横断中の歩きスマホの罰金は35ドル(約5,400円)、点滅が始まってからの横断では130ドル(約20,000円)の罰金が科されるそうだ。

 捕まるともちろん罰金を取られるし、支払いを無視して帰国すると次回入国時に逮捕されてしまうケースもあるようなので、観光で訪れる際は気をつけよう。

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日本の場合はしっかり違反行為になるので注意

 さて、日本の場合はどうなっているかというと、道路交通法で以下のように決められている。

道路を通行する歩行者または車両等は、信号機の表示する信号または警察官等の手信号等に従わなければならない(同七条)

歩行者は、道路を横断しようとするときは、横断歩道がある場所の付近においては、その横断歩道によって道路を横断しなければならない(同十二条)

 これに違反した場合、特に大事故につながるような事態になった場合は、歩行者でも刑事罰・民事罰を受ける可能性もあるとのこと。なんなら車の修理代の負担を求められることも。

 自分自身と周囲の安全のためにも、「赤信号は渡らない」「横断歩道のない道路も渡らない」のルールは守るようにしよう。

References: Jaywalking officially legalized in New York City. Here's what it means for pedestrians.[https://www.cbsnews.com/newyork/news/jaywalking-legalized-in-nyc/] / Jaywalking legalized in New York City after Mayor Eric Adams declines taking action[https://nypost.com/2024/10/30/us-news/nyc-legalizes-jaywalking-on-streets/]

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