落語家の知られていないルールの中に、プロになると落語会の客席に座ってはいけないというものがある。私も入門前は、たくさんの落語会に足を運んでいた落語ファンであった。
それが、入門した瞬間から、客席から仲間の落語を聴くことができなくなるのだ。
なんと悲しいこと・・・と、思われるでしょうが、しかし! 袖からには限定されるが、逆に聴き放題になるのだ。この横顔からの勉強は噺家(はなしか)になったからこその特等席でもある。
それをこの間、コッソリと覆してしまった。一門の春風亭一之輔兄さんのトークショーを客席から観(み)てしまったのだ。もちろん、落語じゃないから良いのだけど、ソワソワするもんだなぁ。
「古舘と客人と vol・16」という、古舘伊知郎さんのトークイベントのゲスト出演。
この面白おじさん二人のトークがつまらないわけがない。場所は丸の内のコットンクラブ。
ラグジュアリー過ぎやしませんか?という寄席とは真逆の贅沢(ぜいたく)空間。 桟敷席の代わりにオシャレなソファー、そして和太鼓の代わりにピアノの音。
異空間に兄さんが出てくるのにワクワク。まずは、古舘さんが登場! 私の席横のバックヤードから客席を通って舞台へ。え?兄さんもここから出てくるの? じゃぁ、握手を求めた方が良いのか?とぐるぐる考えていると、真逆の舞台袖から出てきた。なんだよー。
ここから1時間半の二人っきり、台本なしのトーク。
楽屋で話してる兄さんに8千円は高いかなと少しでも思った私が恥ずかしい笑。
二人の一言目からの軽快なトークに、すぐに大爆笑してた。
仲間目線なしの完全お客様な私。脱線したり、戻ってきたり。お互いをいじったり、いじられたり。あっと言う間に終わってしまった。
すご過ぎた。余韻に浸りながらお会計をして外に出ると、今度は噺家として到底私にはできっこない武士の斬り合いのようなトークに地団駄(じだんだ)を踏んでいた。
東京駅の前でちびっこおばさんがきぃっ!と地団駄。二人ともカッコ良すぎだぜ。
「兄さんかっこよかったでー」とLINEすると、「おじさん、がんばったろ」と返信。
さっきの人と同一人物なのか? 今度は袖からの勉強に戻るけど、兄さんは落語姿もカッコ良いんだよなー。きぃっ!と、再び地団駄おばさん。私も頑張るぞ!
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No. 44 からの転載】
【写真1】
蝶花楼桃花(ちょうかろう・ももか)/東京都出身。春風亭小朝さんに弟子入り後、二ツ目・春風亭ぴっかり☆時代に「浅草芸能大賞」新人賞を受賞。2022年3月、真打ちに昇進し高座名を「蝶花楼桃花」と改める。昇進披露興行、初主任興行、企画にもかかわった全出演者女性による「桃組」はいずれも大入り。今年7月、31日連続ネタおろし独演会「桃花三十一夜」を池袋演芸場で開催、大成功をおさめる。
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