ゲームセンターのクレーンゲームで景品をとり続けてたら、店側から「出禁にするぞ」と脅された──。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。
相談者は、友人や子どもへのプレゼントとして、できるだけたくさんとろうと情熱を燃やし、クレーンゲームに没頭。店側に景品の補充を何度も頼んではゲットするということを繰り返していました。
途中、店員から「移動できますか」と尋ねられたものの、「在庫あればお願いします」と回答。さらに続行しようとしていたところ、店長らしき人物から「アンタとりすぎ」と指摘され、「うちはボランティアじゃないんだから…出禁にするぞ!」と言われてしまったそうです。
相談者が遊んでいたクレーンゲームの台には「おひとり様1個まで」といった注意書きはありませんでした。相談者としては、料金もしっかり払い、ルールを守って遊んでいるのだから、「ボランティアだの出禁だの言われる筋合いはない」と憤りを感じ、脅されたとして警察を呼ぶことも考えたようです。
出禁を言い渡すことで罪に問われるようなことはあるのでしょうか。また、何らルール違反していなくとも、出禁措置には応じないといけないのでしょうか。大和幸四郎弁護士に聞きました。
●脅迫には当たらず…むしろ「出禁」の対象になりうる──「出禁にするぞ!」は脅迫になるのでしょうか。
私自身はクレーンゲームをほとんどしたことはありませんが、「出禁」を言い渡されて理不尽に感じた客が、店に対して抗議をしたいとか警察を呼びたいという気持ちはわからないでもありません。
ただ、「出禁にするぞ!」だけでは、客が脅されたと感じたとはいえ、店が客に対して「生命、身体、自由、名誉、又は財産」に害を加えることを告知したとはいえないので、脅迫罪(刑法222条1項)には該当しないと考えます。
──「出禁」とは法的にはどのような位置づけなのでしょうか。
民法上、契約自由の原則があります。どんな相手と契約するかどうか、という選択の自由も含まれます。サービスを提供したくない相手とは契約しないことができます。
また一般的に、店側には、店内の秩序維持のために、施設を管理する権利があるとされています。たとえば、迷惑行為を繰り返す客に対して、店外へ退去するよう求めたり、店内への立ち入りを拒否することもできます。
退去に応じなかったり、拒否されているにもかかわらず店内に立ち入った場合には、建造物侵入罪や不退去罪(刑法130条)、業務妨害罪(刑法233条、234条)などが成立する可能性はあります。
●「ほどほどをもって最上」というスタンスで──何らルール違反していなくても「出禁」と言われた以上は従うしかないのでしょうか。
私見としては、前述の契約自由の原則や施設管理権に基づいた「出禁」として許容されるのではないかと考えます。
今回のケースでは、相談者が店側に景品の補充を何度も頼んではすぐにとるということを繰り返していたとのことですが、景品を軒並みとってしまうことのほか、ずっと同じクレーンゲームの台を“占拠”することで、他の客の遊ぶ機会や景品をとるチャンスを奪っており、他の客にとっては迷惑という側面もあると思います。
抵抗する手立てとして裁判で争うなどもあり得るかもしれませんが、勝てる見込みや労力を考えれば現実的ではないでしょう。
お金を払って遊んでいるからといって何でも許されるというわけではありません。「ほどほどをもって最上」というスタンスで遊ぶのが一番ではないでしょうか。
【取材協力弁護士】
大和 幸四郎(やまと・こうしろう)弁護士
佐賀県弁護士会。2010年4月~2012年3月、佐賀県弁護士会・元消費者問題対策委員会委員長。佐賀大学客員教授。法律研究者、人権活動家。借金問題、相続・刑事・男女問題など実績多数。
事務所名:武雄法律事務所
事務所URL:http://www.takeohouritu.jp/
コメント