日本で白・黒・シルバーのクルマが人気な理由は「下取り査定額」と「納期」の影響だった!

この記事をまとめると

■ボディカラーの定番は白・黒・シルバー

■再販価値への影響が少ないので小型車では事情が異なる

■日本では売れている色や再販価値の高さで選ばれることが多い

乗用車では白・黒・シルバーから車体色が選ばれることが多い

 日本おけるクルマのボディカラーは、白、黒、シルバーあたりが定番となっている。「冠婚葬祭問わず乗っていける色」として赤系など派手な色を敬遠する動きもあり、欧米人ほど自己主張しないとされる日本人らしい選択ともいわれていた。筆者も現在の愛車であるカローラのボディカラーはシルバーメタリックなのだが、圧倒的に汚れが目立たないという点も大きいようだ。

 白や黒系では追加料金のかかる「オプションカラー」である、「パール塗装」系の人気が高い。ソリッドホワイトは車種を問わず営業車両などの定番カラー。ソリッドブラックは塗装が弱く、軽くウエスでふいただけで表面に傷がつくデリケートなものだが、それでも好きな人が多い。

日本でクルマのボディカラーが偏るのは料金・再販・納期などのさまざまな理由がからんでる

 いまどきはボディコーティングをかけるのが当たり前のようになっているので、昔ほど神経質になる必要はないが、とくにソリッドブラックはいまでも敬遠気味となっている。ミニバンの世界では、パールブラックかパールホワイトが「お約束」となっており、これ以外のボディカラーの場合は下取り査定額がぐっと下がることを回避できないともいわれている。

 ただし、ここのところは軽自動車やコンパクトカーなどでは定番色ではないボディカラーも豊富に用意され、それが選択されている。筆者もディーラーで軽自動車の見積りを取るときは、カスタム系のボディタイプならばパール系のホワイトがブラックを選ぶが、標準シリーズではシルバーなどでは地味すぎてほかの色を選びたいという気もちになる。軽自動車やコンパクトカーではセカンドカーニーズや女性ユーザーも多く、ほかの車種よりも個性的なボディカラーを選んでも再販価値に大きな影響を与えない傾向もあるので冒険して選ぶ人も目立っているようである。

日本でクルマのボディカラーが偏るのは料金・再販・納期などのさまざまな理由がからんでる

 コンパクトカーに限っていえば、会社の営業用やレンタカー、カーシェアリングなどでもよく使われることもあり、もともと再販価値が際立って低いので、あえてそこにこだわることなく自由にボディカラーを選ぶということもあるようだ。

 トールタイプの軽自動車のカスタム系シリーズでは、パールホワイトやパールブラックがメインともいえるのだが、調べてみるとほかにもボディカラーは用意されている。たとえばホンダN-BOXでは6色あるなかでクリスタルブラックパール以外はオプション、つまり追加料金が発生してしまう。スペーシアカスタム・ハイブリッドGSでは7色あるなかで2色がオプションとなり、さらに人気のホワイトパールがオプションなのに対して黒系パール色は標準色となっている。

日本でクルマのボディカラーが偏るのは料金・再販・納期などのさまざまな理由がからんでる

 つまり、ボディカラー選択が必ずしも購入者個々の好き嫌いだけで選ばれているのではなく、「追加料金がかかるのか、かからないか」という面での考慮も入ってくる。

 さらに決定的なのが納期となる。オプションかどうかは別としても、販売現場で「よく出る」とされるボディカラーは先行生産していることも多く、納期がほかの色より圧倒的に早いことが多い。そのような理由で偏ったボディカラーに流れることとなり、それが人気カラーとして世のなかに紹介されているともいえるのである。受注生産販売(注文を受けてから生産開始する)が大原則の日本ではより効率的な生産が求められているので、その点で「人気ボディカラーの誘導」はやむを得ないのかもしれない。

日本でクルマのボディカラーが偏るのは料金・再販・納期などのさまざまな理由がからんでる

 その点、世界では在庫販売がメインとなっており、ディーラーのストックヤードにある在庫のなかからお気に入りのボディカラーを選ぶことになるので、日本ほどボディカラーの偏りはないように感じている。

さまざまな事情が折り重なるボディ色選び

 軽自動車に関しては届け出済み未使用軽中古車が多く流通している。使用していない新車にナンバープレートだけつけたもので、未使用中古車を購入する様子を見ていると、さまざまなメーカーの、さまざまな車両が展示してあるので、メーカーや車名にこだわらず、スタイルやボディカラーで自由に選ばれている光景を目にすることも多い。

日本でクルマのボディカラーが偏るのは料金・再販・納期などのさまざまな理由がからんでる

 また、傾向としては日本車であっても標準色の設定が極端に絞られる傾向も目立ってきている。たとえば日産エクストレイルでは12色あるなかで標準色、つまり追加料金のかからないボディカラーは2色しか設定されていない。それでもエクストレイルぐらいの価格帯のモデルでは、オプションか否かにこだわらずにボディカラーが選ばれているようだが、12色のうち2色のみが標準色と聞くと一瞬躊躇してしまう。12色もあるので有料か否かに関係なく、やはり納期にボディカラーが影響するのは避けられないようである。

日本でクルマのボディカラーが偏るのは料金・再販・納期などのさまざまな理由がからんでる

 ホンダWR-Vでは5色あるうち、クリスタルブラックパールのみ標準色となっている。WR-Vは最廉価グレードが軽自動車のカスタム系モデル並みの支払い総額になる割安感も魅力で人気の高いモデル。そのキャラクターもあるのか、ボディカラーの選択は唯一の標準色であるクリスタルブラックパールに集中しているようだ(最廉価グレードではとくにその傾向があるようだ)。

 ただ、ここへきて在庫(先行発注モデル)が中間や上級グレードが多くなってきているようで、それらグレードではボディカラーによる納期の差はそれほどなく、「オプションカラーのほうが早い」といったような話も聞いており、街なかでは黒系色以外もよく見かけるようになった。

日本でクルマのボディカラーが偏るのは料金・再販・納期などのさまざまな理由がからんでる

 輸入車の世界では「標準色はひとつ」というようなことは珍しくない。日本国内でもリクエストはできるようだが、本国のヘッドクォーターがセレクトして船に乗せた車両、つまり在庫販売が原則となるのが輸入車。そのため、ドイツ系ブランドのなかにはホワイト系カラーを標準とし、これをメインに販売している。

 過去には「ドイツ車ならシルバー」という話もあったが、いまではシルバー系のほうが再販価値は下がりやすいという話も聞いたことがある。それほどブランドによっては新車でも中古車でも白系カラーメインで流通しているのである。もちろん数千万円レベルの高級車ではその例にあてはまらないが、普及クラスでは自ずとボディカラーの選択は限られるようである。

日本でクルマのボディカラーが偏るのは料金・再販・納期などのさまざまな理由がからんでる

 ただ、「本国が選んだ」と前述したとおり、売れ筋カラーだけではなく、「えっ」と思うようなボディカラーのモデルも輸送船のなかには含まれるようである。また、新型コロナウイルス感染拡大がひどかったころは、輸入車といえども受注生産方式をとっていた量販ブランドもあり、そのときは「いまなら納期のバラつきはありませんから、好きなボディカラーやオプションが選べますよ」といわれたこともあった。

 ちなみにアメリカでは、過去に比べれば派手なボディカラーは鳴りを潜め、過去にはあまり見かけなかった白系なども目立っている。かつてはソリッドレッドなど派手な色を車種に関係なく好んで乗っていたのだが、一時期「そのようなボディカラーに乗る人は事故を起こしやすい」となり、ボディカラーで保険料が異なるようになったそうで、そこから地味めな色に乗る人が増えたとも聞いている。

日本でクルマのボディカラーが偏るのは料金・再販・納期などのさまざまな理由がからんでる

 日本では本人の好みなどの前に商談で、「売れている色は?」とか、「再販価値が期待できる色は?」としてボディカラーを絞り込む傾向も強い、さらにセールスマンも「納期のより早い色ですと……」と勧めてくることもある。

「なんの制限もなく好きな色を豊富なバリエーションのなかから日本でも選べたら」と考えたとき、それでも選択される色は偏るのか、それとも同じクルマでも色とりどりの車両が街なかを走るのか、国民性を考えると前者となりそうな気がする。

日本でクルマのボディカラーが偏るのは料金・再販・納期などのさまざまな理由がからんでる

日本でクルマのボディカラーが偏るのは料金・再販・納期などのさまざまな理由がからんでる

日本で白・黒・シルバーのクルマが人気な理由は「下取り査定額」と「納期」の影響だった!