過去5万本の記事より大反響だった話をピックアップ!(初公開2022年3月7日 記事は取材時の状況、ご注意ください)
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 業績悪化などで、早期退職を募集する上場企業は2年連続で80社を超え、募集人数も1万5000人以上となった。会社員に忍び寄る“クビ切り”が現実味を帯びるなか、長年勤めた会社に“棄てられた”人たちはどうすべきか。実情をリポート!

◆5割増しの退職金を手に早期退職も“自分探し”の日々

 大手ゼネコンに新卒で入社以来、営業畑一筋に生きてきた山上矢一さん(仮名・50歳)は、’20年末の希望退職の募集に手を挙げた。

「営業部の係長として現場を回りながら、部下や他部署のフォローに奔走する日々でした。会社の指示通りにやったらお客さんからクレームがきて、私が謝りに行くなんてこともザラ。年を取っても続けるような仕事ではないですね」

 年を追うごとに取引先の担当者が自分よりもはるかに年下であることが多くなり、息苦しさを感じる場面が増えた。頼みごとをしづらいという理由で「若い担当者に代えてくれ」とハッキリと言われたこともあるそうだ。

◆40歳以上の全社員が上司面談

 退職金の額が記載された案内が届いたとき、心はもう傾いていた。

「40歳以上の全社員が上司面談を受けるんです。1回目の面談は希望退職募集の経緯の説明で、2回目が意思確認。私はここで、辞めると伝えました」

◆退職後半年間は読書や趣味

 こうして、5割増しで支払われた退職金約3000万円とともに、山上さんは’21年3月に退社した。

「一般の方と違って『ヤベェ来月からカネねぇ!』ってわけじゃないので、退職後半年間は、読書や趣味に時間を費やし、転職活動に本腰を入れ始めたのはつい最近です。

 せっかくなら他の業種にチャレンジしてみたいと思って、老人ホームの支配人の求人に書類を出したこともあります。社会貢献、地域貢献できそうじゃないですか」

 いざとなれば、勝手知ったる営業職なら内定が出そうだが、選り好みする山上さん。退職金の残高と“自分探し”を天秤にかける。

◆●山上矢一さん(仮名・50歳)

・大手ゼネコン営業部係長
・退職前年収=約700万円
・勤続年数=28年

「最初に手を挙げたほうがお得でした」

<取材・文/松嶋千春(清談社)>

【松嶋千春(清談社)】
様々なメディア媒体で活躍する編集プロダクション「清談社」所属の編集・ライター。商品検証企画から潜入取材まで幅広く手がける。

山上矢一さん(仮名・50歳)