現代の民間機のデザインは、胴体の全体に塗装が施されていることが一般的ですが、かつては金属の地肌をあえてむき出しにして、胴体全体がギラギラと光っていたものもありました。このデザインはなぜ見かけなくなったのでしょうか。

貨物機とかもだいたい「白ベース」

現代の民間機の機体デザインは、胴体のほとんど全体に塗装が施されていることが一般的です。その一方で、かつてのJAL日本航空)の貨物機やアメリカン航空機など、金属の地肌をむき出しにした状態で、胴体全体がギラギラと光るデザイン「ポリッシュドスキン」もありました。どのような効果があり、なぜ近年見かけなくなったのでしょうか。

通常、旅客機はもちろん、それほど美観を重視しない貨物機などでデザインが“ほぼない”機体ですら、白いベースカラーだけは機体に施されています。

そもそも旅客機の胴体はアルミ合金や強化繊維プラスチックでできており、地の色は白ではありません。飛行機の塗装を施す大きな目的は、機体を腐食から保護すること。また、ドアの枠や非常口の位置など航空法で定められた表示を行う役割もあるとされています。

また、白ベースデザインが多くを占める理由については、安心感や清潔感を与える色として、機体塗装でも好まれやすいほか、コスト面でも有利とされています。

そのようななかで一部航空会社で採用されてきた「ポリッシュドスキン」。JALによると、「ジャンボ機」ことボーイング747の場合、胴体表面に使用される塗料の重さは約150kgといいます。「ポリッシュドスキン」を採用することで、その分機体が軽くなり、これにより1年間で1機あたり4万リットルドラム缶だと約200缶分に相当する燃料を節約できるとされています。

ただ、これが現代の機体塗装における主流とはなりませんでした。

「ポリッシュドスキン」なぜ廃れた?

軽く、燃費向上の効果が期待できる「ポリッシュドスキン」は、なぜ近年見なくなったのでしょうか。これには2つの背景が考えられるでしょう。

1つは「ポリッシュドスキン」を採用することが、コスト減につながらなかったことです。この塗装を採用していたアメリカン航空では、磨き上げるメンテナンスに手間を要することから、燃費が節約できても人件費が高くつき、結局、塗装するのと変わらないものだったと現地メディアが報じています。

また、胴体の素材のバリエーションが増えたことも、「ポリッシュドスキン」が廃れた一因といえます。例えばボーイングが2011年に就航させた「787」や、エアバスが2015年に就航させた「A350」などは、胴体に「CFRP(強化繊維炭素プラスチック)」を使用。これはアルミ合金より軽くて強い一方で、素材のカラーも銀ではありません。

アメリカン航空では、2013年から順次、ベースカラーを「ポリッシュドスキン」ではなく、新塗料のシルバーに変更しました。これは、ボーイング787の導入により、従来デザインの継続が難しくなったことが1つの理由とされています。

JALカーゴの初代ボーイング747F「ポリッシュドスキン」機、機番はJA8180(画像:contri[CC BY-SA〈https://bit.ly/34rszgG〉])