いつの時代にも存在する姑による嫁いびり。同居しなくても帰省のたびに嫌がらせを受けるなんてことは珍しくない。また、お互い近距離に住んでいれば、顔を合わせる機会も増えてしまうだろう。

 精密機器メーカーに勤める渡辺貴博さん(仮名・54歳)の次女M子さんは、7年前に22歳の若さで結婚。少し早い気もしたが、自身も結婚したのは23歳だったこともあって本人の意思を尊重して快く送り出したそうだ。

◆娘夫婦の自宅を毎週アポなしで訪問する義両親

「相手は娘が専門学校時代にアルバイトしていた飲食店の運営会社の社員。6歳年上だったのですが誠実そうな青年に見え、『絶対幸せにします!』と言ってくれたのを信じたんですけどね」

 ちなみに結婚当時、彼が働いていたのは義実家がある地域の店舗。しかも、飲食店という仕事柄、帰宅は毎日深夜になっていた。

 M子さんも派遣社員の事務をしていたが、当然先に帰宅するのは彼女。すると、その時間に合わせて毎週のように義両親がアポなしで訪問。半ば強制的に自分たちの分まで料理を作らせていた。

 ただし、その事実を知ったのは結婚から1年近く経ってから。M子さんが姉である長女に相談し、事態を重く見た彼女が、父親である渡辺さんに教えてくれたのだ。

◆義両親の傲慢な態度にビックリ

「話を聞いたその日のうちに電話しました。最初は言いづらそうでしたが、姑は調理中だけでなく出来上がった料理についてもダメ出し。その様子を録音アプリにこっそり保存しており、送ってもらった音声データを確認しましたが私や妻を侮辱する言動もあり、聞くに堪えない内容でした」

 さらに舅も別の意味でヤバい人物。M子さんは息子の嫁なのに晩御飯とは別に酒のつまみを作るように命じ、お酌までさせる有様。テーブルの上に醤油が置いてあるのに自分で取ろうとせず、「醤油」と言うだけ。

 だだし、これはまだマシなほうで、お茶やご飯のお替りを求める際は、無言で湯飲みや茶碗を肘より高く上げるだけ。まるで女中かのように扱い、お礼を言われたことは一度もなかった。

 M子さんは夫にも何度も相談したが「悪気はなかった」と終始義両親の味方。それどころか途中からは「ウチの親の上手く付き合ってくれないと困る」と彼女に責任があるような言動を繰り返した。

◆出張の際、娘の家を訪ねたタイミングで義両親が襲来

「彼の父親は当時68歳で母親も65歳、この時、47歳だった私とは親子ほど年が離れていました。今思うと、下に見られていたのかもしれませんが2人の外面は良く、優しそうな印象だったので完全に騙されました。

 まあ、籍を入れたらこっちのものだと思ったんでしょうね。ただ、幸いなことに娘は妊娠しておらず、すでに離婚に向けて準備を始めていました。だから、私も妻もできる限りのサポートをすると伝えたんです」

 実は、それから約半月後、渡辺さんはM子さん夫婦が暮らす県に泊まりの出張があり、仕事終わりに会いに行くことに。しかし、着いて20分もしないうちにインターホンが鳴り、相手はなんと義両親。

◆嫁いびりの現場を現行犯で押さえることに

 普通なら挨拶するところだが、ここで思いついたのは、嫁いびりの場面を現行犯で押さえること。M子さんに提案すると彼女も「面白そう!」と乗り気だったため、玄関に置いてあった自身の革靴を隠し、リビングの隣の寝室に身を潜めた。

「娘夫婦が住んでいたマンションはオートロック式。1階入口のインターホンを鳴らしてから上がってくるまで2分ほど時間があり、隠れることができました。娘もそれまで耐えてきたから反撃の絶好の機会だと捉えたのでしょうね」

 部屋に上がった姑は嫌味を連発、舅もまるで召使いのようにM子さんを扱う相変わらずな態度。でも、この日の彼女はいつもと違い、「来る前は連絡していただけませんか? 週に何度も来られても困ります」と面と向かって話した。

ところが、姑は「嫁いだ身なのだから義両親に尽くすのは当たり前」と言えば、普段口数の少ない舅も「その態度は何だ!」と激怒。ただし、このタイミングで渡辺さんが奥の部屋から登場すると、驚きのあまり義両親はその場で固まってしまったとか。

◆自分が悪いのに逆ギレしてきた相手の父親

 2人を徹底的に糾弾すると、姑は言い訳を繰り返してばかり。舅は開き直って「それがどうした! 年下の分際で!」と恫喝してくる始末だ。

 それでもこの逆ギレに渡辺さんは怯むことなく、「しょぼくれたジイさんに吠えられても怖くありませんよ。それよりアンタらこそ人の娘を何だと思ってんだ!」と大声で言い返す。

 結局、これに向こうは完全にビビッてしまい戦意喪失。後日行われた話し合いで娘婿とその両親は再構築を望んだが、M子さんにその意思はなく、加えて弁護士を立てたことでジ・エンド。少額ながら夫から慰謝料を取ることもできた。

「娘婿は義両親を擁護し続けたことに加え、モラハラ的な言動をたびたび行っていたので相手の有責にできました。弁護士の先生が頑張ってくれたのが大きかったですけどね」

◆相手の父親は最後まで反省の色なし

 ただし、父親のほうは納得がいかなったのか離婚後に実家に電話。文句を言ってきたので「そういう話は聞く気がありませんので」とガチャ切りしてしまったそうだ。

「母親は嫁いびりをしていた自覚があったけど、この父親は自分に非があるとは最後まで思っていなかったみたいです。その感覚が理解できないというか、ちょっと気味が悪かったですけどね」

 結婚はあくまで当事者同士のもの。自覚の有無に関係なく、親がしゃしゃり出て子供の結婚相手が嫌がるような振舞いは慎みたいものだ。

<TEXT/トシタカマサ>

【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。

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