この画像は、アメリカ、ネバダ州北東部に位置する「ピラミッド湖」を宇宙から撮影したものだ。
ご覧の通り、宇宙の銀河を彷彿させる見事なエメラルドグリーンで、神秘的な緑の渦巻きが出現している。
この幻想的な光景は人工衛星ランドサットがとらえたもの。世界中の衛星写真を使用した研究とデータ管理を行う地球資源観測科学センター(EROS)がが公開したものだ。
いったいこの湖に何が起きているのだろう?緑色であるということを考えればピンとくるかもしれない。
関連記事:バルト海に巨大な緑色の渦巻きが出現、藻の大量発生でデッドゾーンが形成されていた
ピラミッド湖に大量に発生した藍藻
その正体は「藍藻(らんそう)」の一種「 Nodularia spumigena」が大量に発生したことによる。
藍藻は、酸素発生を伴う光合成を行う細菌の一群で、温暖な汽水域(淡水と海水が混ざった水域)にはよく見られるが、ピラミッド湖ではこうした藍藻が毎年のように出現する。
だが、2024年はここ数年でもっとも大きな渦巻きであるという。藍藻の渦巻は「水の華」とも呼ばれている。
関連記事:それ何製?バクテリア製。細菌で作ったかっこいいサングラスが開発される
ピラミッド湖の緑色の神秘的な渦巻きはNASAの地球観測衛星「ランドサット9号」によって撮影されたものだ。
人間には有害な毒素を放出
宇宙から見ると神秘的で緑色のバラが咲いたかのように美しいと感じるかもしれないが、あまり近づかない方がいいようだ。
と言うのも、藍藻は「ミクロシスチン」という皮膚を刺激する毒素を放出しており、うっかり飲んでしまえば、腎臓や肝臓に障害を負う恐れがあるからだ。
関連記事:藻類の光合成で発電する電池で1年間電子機器に電気を供給することができる
ピラミッド湖を監視している先住民族のパイユート族は、今年の藍藻による水の華は例年よりも大きく、そこに訪れる人々は水に触れないよう注意が必要であると警告している。
藍藻が湖の多様性を守っている
ピラミッド湖はネバダ州最大の自然湖の一つで、面積は約487平方キロメートル。
さまざまな魚や鳥が生息しており、野生動物好きには人気のスポットだ。また釣り人にも人気だ。
関連記事:史上初、25億年前のルビーの中から生命の痕跡が発見される
この湖は最終氷期に存在した古代の湖「ラホンタン湖」の名残で、絶滅が危惧されるクイウイという魚が生息する唯一の場所としても知られている。
今回のような水の華は、毎年夏から秋にかけて発生するが、今年は10月中旬の台風の影響で、藍藻がとりわけ大量に繁殖しているのだそうだ。
毒素を放出するというと、なんだか恐ろしげに思えるが、こうした藍藻はピラミッド湖の多様性を保つうえで大切な働きがある。
藍藻が太陽の光を遮るおかげで、水草が過剰に増えずに済むのだ。そうした水草が大量発生すると、水中の酸素が減ってしまい湖が窒息してしまう。
毒を出す藍藻ではあるが、意外にも湖の豊かさを守る存在でもあるということだ。
関連記事:オタマジャクシに植物を注入、光合成を利用し脳に酸素を送ることに成功
こうした水の華がピラミッド湖でいつから出現するのようなったのか、確かなことは不明だが、歴史的記録によれば、ずっと昔から続いてきたことであるそうだ。
References: USGS Satellites and Test Tubes Meet to Ensure Safe Drinking Water | U.S. Geological Survey[https://www.usgs.gov/centers/eros/news/usgs-satellites-and-test-tubes-meet-ensure-safe-drinking-water] / Pyramid Lake in Nevada with Algal Bloom | U.S. Geological Survey[https://www.usgs.gov/media/images/pyramid-lake-nevada-algal-bloom]
コメント