この記事をまとめると
■高速道路では120km/hが最高速となる区間が4カ所存在する
■設計段階でその道路で安全に出せる速度が決まっている
■警察庁が速度の引き上げを判断しているので引き上げのためには相当な時間がかかる
高速道路の最高速ってどう決めてる?
その昔、日本の警察庁は頑ななまでに「高速道路の最高速度は100km/h!」という姿勢を崩そうとしなかった。だが、2020年9月16日に東北道の花巻南―盛岡南間で最高速度が120km/hに引き上げられ、現在では、前述の花巻南―盛岡南間を含む下記の4区間が最高速度120km/hに変わっている。
・東北道 花巻南―盛岡南間
たとえば新東名の当該区間を走ったことがある人ならよくご存じのとおり、120km/h制限区間はじつに快適である。現代のクルマにとっては「かったるすぎる」ともいえる100km/hでトロトロ走る必要がなく、世界基準(だいたい120~130km/h)のスピードにて、覆面パトカーやオービスの存在を気にせず走れるのだから、快適でないはずがないのである。
もちろん現状、「120km/h制限に引き上げられた区間が短すぎる」「相変わらず100km/h以下で追い越し車線を走っているドライバーも多い」「常に混雑していて、そもそも120km/h出せない区間もある」「速度に不慣れなドライバーもいる」などの問題もあることは承知だ。だが、国産車の性能向上の実態にそぐわない「100km/h制限」というナンセンスな壁が崩れていくこと自体については、個人的には諸手を挙げて賛成したい。
それゆえ、「もっともっと最高速度120km/hの区間が増えてほしい! いや、できればフランス並みの最高速度130km/hにしてくれ!」とも思うわけだが、実際はなかなかそうもいかない。
なぜならば、日本の高速道路上の最高速度120km/h区間を決めるにあたって、警察庁は「設計速度が120km/hであること」を、現時点では絶対の条件としているからだ。
設計速度とは、道路構造令第2条第22号によれば、「道路の設計の基礎とする自動車の速度」と規定されていて、「道路の幾何構造を検討し決定するための基本となる速度」であり、曲線半径と片勾配、視距のような線形要素と直接的な関係をもつほか、車線、路肩等の幅員を決定する直接の要因である道路の区分の考え方のもとにも、設計速度の概念が導入されており、幅員要素とも間接的な関係が保たれているとされている。
……というのは内閣府のサイトからコピペした文章だが、これではあまりにも「お役所言葉」すぎて訳がわからないため、書き直そう。
そう簡単に最高速は引き上がらない
設計速度とは「天候が良好でかつ交通密度が低く、車両の走行条件が道路の構造的な条件のみに支配されている場合に、平均的な運転者が安全に、しかも快適性を失わずに走行できる速度」のことだ。
日本の高速道路の多くはこの設計速度が100km/hとなっているのだが、一部の区間は設計速度120km/hになっている。そして新東名の設計速度も(警察庁の反対により)120km/hになったが、道路としての基本構造は、実質的に設計速度140km/hである。
で、そんな設計速度120km/hの区間のなかから警察庁が「片側3車線の道路を優先して、順次、関係県警察において、高速道路会社等と調整等を行う」としたうえで、とりあえずは前述の4区間が最高速度120km/hになったわけだ。
そして、その4区間以外にも設計速度が120km/hの区間はまだまだある。そのため、順次とっとと120km/h化してほしいとも思うわけだが、これまたなかなかそうもいかない。仮に設計速度が120km/hであっても、交通量の多い大都市近郊部や連続距離の短い区間の最高速度を、あまりにも時代錯誤な「最高速度100km/h」にこだわり続けてきた警察庁が、気安く引き上げるとは到底思えないからだ。
今後も東北道や常磐道、関越道、新東名、そして新名神の一部区間の最高速度は120km/hになると予想されるが(というか期待したいが)、まぁ警察庁という、お役所のなかでもとりわけ頭が固い役所がコントロールしている事案なので、残念ながら時間はかかると思ったほうがいいのだろう。
しかし、1958年(昭和33年)という、まだ「ダットサン セダン」や「トヨペット クラウン」あたりが走っていた時代に作られた道路構造令が規定した設計速度に──しかも「平均的な運転者が安全に、しかも快適性を失わずに走行できる速度」って、誰がどうやって決めたんだ?──いまだこだわっているお役人の頭のなかはいったいどうなっているのか? 民間である筆者には、まったく見当も付かない。
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