この記事をまとめると
■トラックドライバーの運転に対して批判の声が上がることがある
■高速道路での並走や急な車線変更などが問題視されている
■トラックドライバーが危険な運転をせざるを得ない事情について解説する
多くはスピードリミッターによる弊害
車体が大きな大型トラックは、どうしても周囲を走る乗用車のドライバーに威圧感を与えてしまうもの。並走しているだけでも圧迫感を与えてしまうし、後方につくだけでも恐怖感を与えてしまう。ボンネットがなく前方の視界が開けているため、大型トラックのドライバーは無意識のうちに、車間を詰めて走ってしまいがち。そのため、「大型トラックのマナーが悪い」とたびたび議論になったりしているのだ。
しかし、彼らはまがりなりにもプロドライバーである。普通に考えると、乗用車のドライバーよりも知識や経験が豊富であるのは明白だ。そんな彼らは、本当にマナーが悪いのだろうか。よく考えてみてほしいのだが、自車が右折待ちで停車している際、もっとも進路を譲ってくれるのは大型トラックではないだろうか。少なくとも、大半の人がそのような経験をしたことがあるはず。
そんな大型トラックに対してよく問題視されるのは、高速道路での並走行為だろう。大型トラックが大型トラックを追い越すために、追い越し車線と走行車線を塞いでしまうというものだ。これも事情を知らない乗用車のドライバーからすれば迷惑な行為だと感じ取れるかもしれないが、これはスピードリミッターによる弊害。大型トラックは、時速90km以上の速度が出せなくなっているのだ。わずかな速度差しかないなかで追い越しせざるをえないからこそ、並走状態になってしまうのである。
そんな大型トラックが追い越し車線へと車線変更をする際、ウインカーと同時に突然割り込んできたという経験をおもちの方も多いだろう。それはとても危険な行為であるし、乗用車のドライバーに与える恐怖感も半端ではない。しかし、これも単なる嫌がらせではなく、スピードリミッターが装着された大型トラックならではの悲哀が隠されている。
前走車に近づくのはトラックドライバーの配慮
大型トラックのスピードリミッターは時速90kmに設定されているのだが、メーカーによって2kmや3km程度の誤差が生じる。そのわずかな速度差が存在するため、追い越しをかける必要性が芽生えてくるのだ。また、高速道路での最高速度を時速80kmに定めている会社もあるため、どうしても追い越し車線に出ざるをえないのが実情である。その場合でも、前走するトラックにギリギリまで近づいてから追い越し車線に移動するトラックが多いため、突然割り込まれたと感じるケースが多いのだ。
ならば、なぜギリギリまで前走車に近づくのか。
それは、追い越し車線を走行する時間を少しでも減らそうとする、大型トラックのドライバーによる配慮でもある。早い段階から追い越し車線に移動してしまうと安全であるのは間違いないが、そのぶん後続車両を妨げる時間が長くなってしまう。かといって大型トラックは前走する大型トラックとの車間距離を保つために一度速度を落としてしまうと、再び最高速度に達するまでに時間を要してしまう。
そのいずれのケースも結果として追い越し車線に長く居座る行為となってしまうため、突然の車線変更をする大型トラックが多いのだ。一見すると危険で迷惑な行為であるようにも感じられるが、このような理由も隠されているのである。
それに、大型トラックが車線変更をしようとウインカーを出した瞬間、加速して車線変更を妨害してくる乗用車は、あまりにも多い。前に入られたくないという思いが無意識にそうさせているのは明白だが、トラックドライバーからすれば、そのほうがよっぽど迷惑な行為に映る。アクセルを踏めば速度が出せる乗用車とは異なり、速度を出せない大型トラックの場合は減速するしか危険を回避する術がないからだ。もちろん、減速してしまうともとの速度に戻すまでに時間がかかってしまう。そのような理由から、ウインカーを出すと同時に車線変更をする大型トラックも多いのである。
もちろんどちらの行為も褒められたものではないし、正解ではない。しかし、速度差のある大型トラックと乗用車が共存する以上、互いが互いに進路を譲るようなゆとりをもち、ハンドルを握ってほしい。そのようなドライバーが増えたなら、きっと悲惨な事故を減らすことができるだろう。
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