日本の47都道府県のうち、どこから社長となる人物が多く輩出されているのか。そんな気になるデータが「社長輩出率」として公表されています。こうしたデータで1位になりがちな「東京」だと考える人もいるかもしれませんが、これはあくまで社長の出身地を示すデータであることがポイントです。さて結果はどのようになっているのでしょうか? 本記事では、帝国データバンク情報統括部の『帝国データバンクの経済に強くなる「数字」の読み方』(三笠書房)より一部を抜粋・再編集し、全国の社長輩出率や女性社長比率について詳しく解説していきます。
社長輩出率トップの都道府県は意外にも……
社長輩出率とは、各都道府県で生まれ育った人物が企業の社長になる割合を指すものです。これはその土地のビジネス環境や教育体制が、企業リーダーを輩出しやすいかどうかを捉えることができる指標と言えるでしょう。
都道府県別の社長輩出率(出身都道府県別の社長数÷各都道府県人口×100)をみると、2023年は福井県が1.37%で全国トップとなっていました[図表1]。
1982年から42年連続でトップを維持しています。国内生産の9割以上を担う眼鏡フレーム関連業者や、繊維関連企業など独立資本の企業が多いためとみられます。
福井県では地域資源を活用した新たな取り組み(商品開発・販路開拓など)に対して、助成などを行う制度や、地域産業の振興・経済の活性化に貢献した中小企業を表彰する制度などを設けています。
こうした中小企業やベンチャー企業を支援する動きも活発であり、若者世代の起業活発化が図られ、社長の平均年齢の若返りが期待されるなど、若者たちが成長し、地元企業のトップに立つ可能性が高まる地域と言えるのではないでしょうか。
社長輩出率が2番目に高いのは、徳島県の1.21%です。10年前の2013年は10位だったのですが、5年前(2018年)には5位へと上昇し、2年前(2021年)に3位、そして2023年に2位へと浮上してきました。
社長輩出率の定義から、人口が減少するとその割合が高まる一因となり得ますが、徳島県は2021年以降、社長の人数自体が増加してきており、その結果として社長輩出率も上昇していました。
女性社長比率は全体の中で1割未満という現実
実は、徳島県にはもう一つ大きな特徴があります。社長全体に占める女性の割合が12.0%と全国で最も高くなっていることです。前年から0.4ポイント上昇し2年連続のトップとなっていました。さまざまな捉え方ができますが、古くからの言い回しで〝讃岐男に阿波女〟という表現もあるように、地域の特色が表われているとも言えるかもしれません。
女性社長比率は、徳島県など四国地方をはじめ、西日本エリアを中心に高くなる傾向がみられました。また、2013年以降首位が続いていた「沖縄県」は11.6%(前年比横ばい)となり、11年ぶりにトップから退く格好となりました(前年は徳島県と同率1位)。
一方で、14年連続で最も低かった「岐阜県」(6.0%、同0.2ポイント上昇)を筆頭に、製造業が集積している中部地方では低調な結果が続いています。
いわゆる「女性管理職30%目標」が2013年に政府から明確に打ち出され、12年目に入っています。当初は2020年が目標の期限でしたが、〝2020年代の可能な限り早期”に修正されるなど、進捗は芳しくありません。
対策の一つとして、2023年6月に打ち出された「女性版骨太の方針2023」では、プライム上場企業に対して2030年までに女性役員比率を30%以上にするよう求めています。このような目標設定や法整備などを含めて女性活躍に向けた施策が講じられ、これまで以上に女性リーダーを増やそうとする動きが強まっています。
しかし、日本全体の社長に占める女性の割合はまだ低いという現実があります。女性社長比率は全体の中で依然として1割未満であり、これは女性が企業のトップに立つハードルが高いことを示唆しているのではないでしょうか。
女性社長の就任経緯をみると、その一端を知ることができます。2023年の女性社長のうち、「同族承継」による就任が50.6%と全体の半数以上を占めていました。男性社長の40.2%と比較して10ポイント以上も高く、女性社長における中心的な就任経緯となっています。次いで「創業者」が35.2%で2番目に多くなっています。男性社長の40.1%より4.9ポイント低い水準です。
「女性版骨太の方針2023」において女性起業家の育成・支援が打ち出されるなど、さまざまな施策が出始めていますが、女性の起業に関する動向が注目されるところです。
女性活躍に関しては、企業や社会全体での課題も浮き彫りになっています。男女平等な社会を目指すなかで、女性のリーダーシップがいかに重要であるかを理解し、女性が経営者として活躍できる環境を整えることが求められています。
全国の女性社長比率は、2023年に過去最高を更新しましたが、依然として1割を下回る水準です。帝国データバンクの調査では、女性管理職の平均割合は前年から0.4ポイント上昇し9.8%となりました。いずれの調査も「過去最高ながら低水準」の局面にあり、拡大こそしているものの社長や管理職などを含めた女性リーダーの輩出は芳しいとは言い難い状況と言えるかもしれません。
しかし、女性社長の割合が増えることは、企業内での意思決定の幅が広がり、新しいアイデアや価値観を組織に取り入れることにつながることが期待されます。多様性がイノベーションをもたらすことに加えて、地元の強みを最大限に活かし、地域の課題に向き合うことにより、企業だけでなく地域社会の発展にも寄与できるのではないでしょうか。
帝国データバンク情報統括部
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