木下は今季71試合の出場にとどまった(C)産経新聞社

 今オフのFA戦線では、中でも「捕手FA」の行方が注目されている。例年になく各球団の捕手が一斉にFAイヤーを迎えており、各選手の去就判断が注目される中、新たな動きも出てきた。

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 中日のベテラン捕手、木下拓哉が国内FA権を行使することが確実となった。11日付の「中日スポーツ」が報じている。

 昨年は6月に右手甲を骨折、長期離脱した際にはファンを心配させた。一方で今シーズン、捕手として最も多く出場を果たしたのは加藤匠馬の82試合、次いで木下が71試合、宇佐見真吾が53試合と3捕手併用のシーズンとなった。

 また木下のFA行使に影響を与えると見られるのが、ほかの球団に在籍する捕手たちの去就判断だ。

 まずリーグ優勝を飾ったソフトバンクからは正捕手の甲斐拓也がFAイヤーとなっている。昨年球団からの複数年契約を断り、単年契約を選択。「育成の星」として知られ、侍ジャパンの一員としても2021東京五輪金メダル、2023年WBCでも世界一奪回に大きく貢献した。

 「甲斐キャノン」と称される強肩、リード面の評価も高く、今季4年ぶりのリーグ優勝に輝いたソフトバンクの扇の要としてしっかり機能した。

 その甲斐を狙うとされるのが、常勝軍団の巨人だ。4季ぶりのリーグ優勝を果たすもCSファイナルSではDeNAに敗れた。

 今季は昨年まで主戦捕手を務めた大城卓三に加え、岸田行倫小林誠司の3捕手併用制を選択。それぞれの捕手の持ち味もあったが、正捕手固定とは至らなかったことでリード、打撃など総合力の高い甲斐が仮にFA宣言となれば、獲得交渉に臨むと見られている。

 そして正捕手流出の可能性があるソフトバンクではまず甲斐の残留交渉に全力を注ぐとする中、仮に流出となれば、FA市場に出る他球団の正捕手にターゲットを絞ることに。

 ここでリンクしてくるのが、FA宣言を行うことが確実となった木下、また巨人の大城、阪神の坂本誠志郎もFAイヤーを迎えているとあってそれぞれの選手の去就判断が注目される。捕手FAにおいては仮に全員が宣言すれば、異例の4捕手が市場に出そろうことになり、実質トレードのような動きとなることも注目されている。

 扇の要といわれる捕手は稀少ポジションとして知られ、一人前になるまでに時間がかかるとされる。各球団、若手捕手の成長を見守る意味でも実績のあるベテラン捕手は欲しいところでもある。

 ただ木下においては「強打の捕手」として知られてきたが、21年にキャリアハイの打率「.270」、11本塁打、43打点をマークした後は今季は74試合で打率「.228」、3本塁打、9打点と落ち込み気味。リード、肩においても全盛期の勢いを感じさせないとあって、どこまで求められるかは未知数の部分もありそうだ。

 いずれにせよ13日までが締め切り期限、14日に公示され、15日から所属球団に加えて、他球団との交渉がスタートする。今週からいよいよFA戦線が本格化することで、各選手の動向にも一層、注目が高まる。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

ますます混沌化してきた捕手FAの行方 現れた「第4の捕手」の存在 ”課題”も浮上