愛知県三河地域を貫く国道23号バイパス「名豊道路」がまもなく全線開通を迎えます。特に愛知県にとって、かなり大きなインパクトを与えそうです。

一般道移動が劇的に変わる!?「名豊道路」全線開通

愛知県の三河地域を貫く72.7kmのバイパス国道23号「名豊道路」がまもなく全線開通を迎えます。唯一の未開通区間である「蒲郡バイパス」II期9.1kmが2024年度の開通を目指して完成目前。国土交通省は、最初の事業化から「半世紀の夢、つながる」と、大々的にアピールしています。

名豊道路は静岡県から続く国道1号バイパス群とつながることで、浜松市から名古屋市まで、約100kmにわたって信号のない無料のバイパス道路が形成されます。

これにより、豊橋―名古屋間は、国道1号経由と比べて1時間50分が約1時間まで短縮されるといいます。浜松からなら、3時間が約1時間40分になるとのこと。一般道の移動が劇的に改善され、通勤・通学・買い物などの日常生活圏が広がるとされています。

愛知県東部の主要都市である豊橋の市街地は、もともと東名高速からかなり離れています。地元の人からは「豊橋から名古屋に行くなら東名を使わずコッチ(名豊道路)」との声も聞かれました。

もちろん、スピードでは東名などの高速道路が勝ります。名豊道路はあくまで一般道であり、最高速度は60km/hです。それでも、信号がないため「時間が読める」ことが大きなメリットになるという声もありました。

「有料要らず」 でも“東名も使える”強さ

「最後の未開通区間」となっているのは、豊川為当ICから蒲郡ICまでの間です。この区間は山間部のため、多くのクルマが、山を迂回するように周辺道路を経由して、蒲郡ICから再び名豊道路に入って名古屋方面へ向かっています。

そのルートは主に2通りあります。豊川為当ICを下り、東三河環状線から海側の国道23号現道か、山側の国道1号へ回り込みます。

前者は蒲郡の海沿いのリゾートラグーナテンボス」付近、後者は国道1号から蒲郡ICまでのトンネルで混雑することがあり、地元の人によるとルートの利用状況は「半々」とのこと。ただ、国道1号ルートは途中で東名の音羽蒲郡ICに接続しており、急ぐ場合は東名を使う、という選択が可能です。

「有料を避けたいから名豊道路を使うという方も多いと思いますが、(音羽蒲郡ICを活用し)状況に応じて高速道路も利用できます」(国土交通省 名四国道事務所 山岡正和工務課長)

2014年に蒲郡ICが開通してから10年が経ち、地元の人には、名豊道路の「分断区間を迂回しながらの通し利用」も、かなり定着しているようです。だからこそ、分断の解消に大きな期待が集まっています。

経済面で名豊道路の大きな恩恵を受けている業界の一つが、愛知県の自動車産業です。自動車の輸出拠点でもある豊橋市の三河港に直結しているため、名豊道路では自動車を運ぶキャリアカーの姿も多く見かけます。

現状では「豊田市の自動車組立工場」から三河港までは1日2往復だそうですが、全線開通後は時短によって3往復が可能になるのだとか。このほか、農産物輸送や緊急時における海上からの物資輸送、緊急避難路の確保という面でも名豊道路の果たす役割がアピールされています。

ただ、今回の開通区間も含め、名豊道路のおおよそ半分は暫定2車線のため、渋滞を懸念する声もあります。未開通部の解消後は、早期の全線4車線化が求められそうです。

豊橋の臨海部を貫く名豊道路(乗りものニュース編集部撮影)。