トランプ氏の勝利に終わった米大統領選挙北朝鮮朝鮮労働党機関紙・労働新聞、国営の朝鮮中央通信共に、8日の時点になっても、結果について報じていない。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、結果を聞いた北朝鮮国民の反応を報じた。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の住民は、トランプ氏当選の話をRFAの記者から聞いて、このような反応を示した。

「トランプが再び大統領に当選したことに驚いている」
「人民の支持を多く受ければ大統領になれて、そうでなければ現職大統領であっても落ちることがあるということに驚いた」
「人民の支持がすべてを決定するという真の選挙がうらやましい」

北朝鮮にも選挙はあるが、形ばかりのものだ。

有権者は候補者が誰かも知らず、選挙運動では「100%投票、100%賛成」が繰り返し訴えられる。そして、投票日の正午のニュースで、その達成が報じられるという流れだ。前回2023年12月の地方人民会議(地方議会)選挙からは、70数年ぶりに複数候補の出馬が認められたが、実際に2人以上の候補が立った選挙区はごく一部で、賛成への投票を強いられる信任投票であることに大きな変化はなかった。

賛成票を投じる場合は、受け取った投票用紙を投票箱に入れるだけだが、反対票を投じるには、衆人環視の中でその旨を鉛筆で記載しなければならない。そんなことをすれば、家族もろとも消されてしまいかねない。

この住民はまた、選挙資金を個人献金で集める方式にも関心を持っているようだ。

「選挙資金が相手候補より少なくても、多くの支持を受ければ大統領になれて、金持ちでも支持を得られなければ選挙に負けるという事実も驚くべきこと」

北朝鮮の人々は、韓国についてはある程度正しい認識を持つようになったが、米国に関しては依然として当局のプロパガンダ通りのイメージを持っているようだ。「何においてもカネが幅を利かせる腐った資本主義社会」というものだが、そうではないことを知り、驚いたということだろう。

「結論はカネではなく、選挙での国民の支持が重要だということだ」「わが国(北朝鮮でも選挙を行うが、候補者選出から結果に至るまで人民の支持が決定するものはない」

もし北朝鮮普通選挙が行われたとしても、実弾(現金)が飛び交う不正選挙となるのはまず間違いないが、米国ではそうならないということに驚いたようだ。

両江道の情報筋は、米大統領選の結果に、まんざらでもない様子だ。・

「全く知らない人より顔が知られているトランプが再び大統領になったのは悪くない」
「わが国の人々は米国大統領の名前もよく知らないが、顔はもっと知らない」
「トランプは米朝会談をきっかけに新聞や放送に多く紹介され、顔を知らない人はほとんどいない」

また、故金日成主席、故金正日総書記がいくら努力しても実現しなかった米朝主張会談だが、初めて実現したのは金正恩総書記の時代になってからだった。

「国民に人気がなかった若い金正恩氏に会ってくれたのがトランプだ」
「トランプは金正恩と会談をした最初の米国大統領

情報筋は、誰が米国大統領になっても一般庶民には関係ないとしつつも、米国との緊張状態が解消して、経済制裁を解除されることを望んでいる。ただ、米朝対話の失敗は金正恩氏にとって最大の失敗でもあり、国民の期待通りに行くかは未知数だ。

そして、最大のハードルとなっているのが核兵器の保有だ。

核実験に成功した当初は、どの国でも持てるわけでもない核を自国が持てたことに胸が熱くなったが、今はその核のせいで私たちに対する経済制裁が強化され、国際社会の視線が悪くなった」
(北朝鮮)当局が核を指して社会主義を守る『革命の宝剣』と言っているが、そう思っていない人が多い」

情報筋は最後に、金正恩氏にこんなアドバイスをした。

「顔見知りのトランプが再び大統領になったチャンスを逃さないでほしい」

板門店の韓国側施設「自由の家」で会談した金正恩氏とトランプ氏(2019年7月1日付朝鮮中央通信)