Zenkenが日本の中小企業経営者を対象に実施したアンケート調査では、「2025年の崖」を「知らない」または「詳しく知らない」と回答した人が8割に上りました。「2025年の崖」とは、老朽化した基幹システムの更新時期と技術者不足が重なる危機的状況を指します。対応が遅れると企業成長が停滞し、国全体の生産性や競争力の低下を招く恐れがあります。今こそIT人材の確保やシステム更新計画に着手することが求められますが、日本の中小企業はどこまで対応できているのでしょうか。本調査結果について、Zenkenの田中志穂・ダイバーシティ事業部長が詳しく解説します。

DX対応に遅れる日本企業

Zenkenが2024年9月に実施した日本の中小企業の経営者へのアンケート調査によると、老朽化した基幹システムの更新時期と技術者不足が重なる「2025年の崖」を「知らない」「詳しく知らない」と回答した人が8割に達した。

日本企業は欧米企業に比べてデジタルトランスフォーメーション(DX)が遅れているとされ、中小企業経営者のシステム老朽化への無関心や知識不足が企業の生産性や国際競争力の低下を招くリスクもある。

「2025年の崖」の深刻さ、経済損失12兆円の恐れも

調査はZenkenが全国の中小企業の経営者を対象に9月2~3日に実施し、200件の有効回答を得た。対象となった業種は、サービス業、製造業、建設業、不動産業、小売業、卸売業、金融・保険業など。

「2025年の崖」は経済産業省が18年にまとめたDXに関する報告書で指摘している。企業のITエンジニア不足が強まるなか、老朽化した基幹システムの維持費が増える状況を「崖」に例えている。

老朽化した既存システムの問題点を解消せずに放置した場合、新しい技術が出てきたとしても取り入れることができない。システムトラブルやサイバー攻撃のリスクも高まる。システムの刷新やDXに十分な人材や資金を回せなければ、25年以降に年間で最大12兆円もの経済損失が生じる恐れがあるとされる。

8割の経営者が「2025年の崖」を理解していない現実

今回のアンケートで「『2025年の崖』が来年に迫っていることを知っているか」と聞いたところ、「知っている」と答えた経営者は19%にとどまった。最も多かったのは「知らない」で56.5%、次に多かったのは「聞いたことはあるが、詳しく知らない」で24.5%だった。「知らない」「詳しく知らない」を合計すると81%に達し、大半の経営者がこの分野について知識不足であることが浮き彫りになった。

「社内で利用しているシステムの老朽化や複雑化への不安はあるか」との質問に対しては「ある」が39.5%にとどまり、「ない」が60.5%に達した。多くの中小企業経営者が、ITシステムの老朽化への危機感が乏しい可能性が高い。

アンケートで「システムの老朽化に対応できる人材が社内にいるか」と聞いたところ、「いない」との回答が64.5%にのぼり、「いる」は35.5%にとどまった。

「IT人材の採用の予定はあるか」との質問に対しては「ない」との回答が63%に達した。「ある」は12.5%、「検討している」が24.5%にとどまり、多くの中小企業の経営者がIT関連の人材不足やシステム更新などに対応できていないことが分かった。

「2025年の崖」が迫る中で、多くの中小企業がシステムの老朽化や人材不足への対応に遅れていることが懸念される。対応が進まなければ、企業の成長が妨げられるだけでなく、国全体の生産性や競争力の低下にも繋がるリスクがある。将来的な損失を避けるためにも、今からでもIT人材の確保や基幹システムの更新計画に着手することが、企業の持続的な発展にとって重要だ。

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