「働き方改革関連法」が2019年4月に施行され、今年で5年目である。「残業時間の上限」を導入する企業は少しずつ増えており、今年の4月に医師、建設業、自動車運転業にも適用された。

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 残業時間は減少しているように感じるが、どのくらい減っているのだろうか。転職・就職のための情報プラットフォーム「OpenWork」(運営:オープンワーク)に寄せられた声をまとめると(※)、2014年の残業時間は平均44時間/月だったが、2023年は同23時間と、この10年で21時間ほど減少していることが分かった。

 2015年と2024年(1~9月)それぞれの残業時間を比較し「10年間で最も残業時間を減らした企業」を調査。10年間で残業時間を減らした企業を見ると、上位3社がコンサルティング会社という結果に。「船井総研」(-77.89時間)が最も減少しており、「フューチャー」(-74.42時間)、「デロイト トーマツ コンサルティング」(-54.01時間)が続いた。

 1位の船井総研と2位のフューチャーに投稿された残業時間を見ると、2015年はどちらも月100時間を超えていたが、この10年で70時間以上も減ったことになる。多くの声を分析すると「企業として長時間労働の是正に取り組んでいることや、個人の裁量によって調整可能であることがうかがえた」(オープンワーク)という。

 船井総研で働いている人からは「独り立ちしていない社員は、先輩の都合に合わせて動くためスケジュールを調整しにくい」(経営コンサルタント、女性)などの声があった。フューチャーの従業員からは「リーダー層だと家庭を持つ人も多いが、離席して家庭の用事を済ませつつ仕事をするなど、比較的バランスはとりやすくなっている」(ITコンサル、男性)といった意見があった。

 デロイト トーマツ コンサルティングで勤務する人からは「近年特にスタッフ層の働き方改革が進んでおり、5~6年前と比較すると業務時間が減り、休暇も取りやすくなっている」(マネージャ、女性)そうだ。

 10年間のデータを振り返ると、コロナ前からコンサル会社の残業時間は減少している。背景として「働き方改革の進展で政府や企業が長時間労働の改善に力を入れてきたことに加え、2013年の流行語に『ブラック企業』が選ばれるなど働き手の意識の変化が大きい」(同社)という。

●残業時間を減らした企業ランキング

 残業時間を減らした企業ランキングの4位は「博報堂プロダクツ」(-46.76時間/月)。5位以降は「大樹生命保険」(-43.41時間)、「PwCコンサルティング」(-43.32時間)、「サイバーエージェント」(-39.65時間)、「博報堂」(-37.14時間)、「アクセンチュア」(-36.54時間)、「日鉄ソリューションズ」(-36.46時間)が続いた。

 上位30社を見ると、コンサル(6社)に次いで「SIer、ソフト開発、システム運用」(4社)がランクイン。日鉄ソリューションズで働く人からは「プロジェクトや担当システムごとに忙しさが全く異なる。忙しくない時期であれば休みは取りやすい。一方で、システムのサービスインなどが重なると残業や休日出勤しないと間に合わない」(プロジェクトマネージャー、男性)といったコメントがあった。

 金融関連からは「生命保険、損害保険」(大樹生命保険、AIG損害保険)と「証券会社、投資ファンド、投資関連」(みずほ証券、SMBC日興証券)合わせて4社がランクインした。

 保険会社(2社)で働く人からは「特に営業職は顧客の予定に左右される一方、自分でスケジュールを決めて活動できる」点を評価する声があった。証券会社(2社)のクチコミからも、「近年は働き方改革の進展などでワークライフバランスが改善している」(オープンワーク)ことがうかがえた。

この10年で残業時間を減らした会社は?