中国メディアの観察者網によると、香港英字メディアのサウスチャイナ・モーニング・ポストはこのほど、中国の電気自動車(EV)メーカーについて、「米国、欧州との競争が激化する中、アフリカに目を向けている」とする記事を掲載した。
記事はまず、中国自動車大手の北京汽車がエジプト国際モーターズ(EIM)の子会社アルカン・オートと提携してエジプト国内にEV組立工場を建設し、来年末までに年間2万台の生産を開始する予定で、約1200人の雇用を創出し、生産台数は5年目までに5万台に増加する計画であることを取り上げた。
記事によると、この工場は国内需要を満たすだけでなく、アジア、アフリカ、欧州の結節点に位置するエジプトの立地を生かして、他のアフリカ諸国や中東にも輸出する。地中海と紅海を結ぶスエズ運河は、アジアと欧州を結ぶ最短の海路で、毎年、世界貿易の10%超もしくは何千隻もの船舶がここを通過している。北京汽車にとってエジプトはこの地域における重要な市場の一つであり、5月に首都カイロに初の旗艦店を開業し、10月には同社にとってエジプト市場を通じた初の世界デビューとなる電動小型オフローダーをリリースした。
記事はさらに、中国自動車大手の吉利汽車の高級EVブランド「極氪(ZEEKR)」が年末までにエジプト市場に参入する計画を発表したことにも触れ、「中国のメーカーは、メキシコ、米国、欧州が中国製EVに関税を課しているため、代替市場を模索中で、エジプトの戦略的な立地とモロッコの半分程度で南アフリカよりも低い人件費に引かれている」とするシドニー大学中国研究センターの准教授で中国・アフリカ専門家のローレン・ジョンストン氏のコメントを紹介した。
ジョンストン氏によると、ウクライナ戦争や欧州の関税問題が低コストのサプライチェーンを混乱させていることに加えて、この地域における緊張によりイエメンの親イラン武装組織フーシ派が紅海で商船を攻撃したため、スエズ運河を利用する船舶の数が減少するなど事態が緊迫する中、生産拠点を市場の近くに移転することでこうしたリスクを回避できる。これは中国だけでなく、スエズ運河の交通量の減少で多額の損失を被っているエジプトにとっても時宜を得た動きだ。
記事によると、中国のEVメーカーによるエジプトでの事業拡大に向けた動きは、中国と米国、欧州との地政学的競争が激化して以来、アフリカ市場を模索している傾向に沿ったもので、比亜迪(BYD)や合衆汽車、小鵬汽車など他の中国メーカーもモロッコ、ケニア、ルワンダ、南アフリカなどの市場に参入している。アフリカ諸国の路上では中国製の電気バスをよく見かける。アフリカ気候財団の事務局長サリエム・ファキル氏は「この10年における中国の新エネルギー車技術の急速な発展を踏まえ、各社がさまざまな市場で世界的な足跡を拡大している。2023年だけでも中国の新エネルギー車のアフリカ向け輸出は前年比3.9倍の成長を遂げた。アフリカ諸国は貿易だけでなく産業チェーンの発展も歓迎している」と語る。(翻訳・編集/柳川)
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