2024年11月12日、中国メディアの観察者網は、日本が支援するインド高速鉄道の建設現場で発生した事故について過去の経緯から皮肉交じりに評する記事を掲載した。
記事は、日本が支援するインド高速鉄道建設現場で5日夕方に死亡事故が発生したと紹介。現地メディアの報道によると、事故現場はクジャラート州アナンドにある村で、掘削作業中に鉄筋コンクリートブロックが崩れて現場で作業をしていた4人が下敷きとなり、3人が死亡して1人が負傷したこと、事故の原因や責任問題については現在調査中であることを伝えた。
そして、日本の世論ではこれまで紆余(うよ)曲折を経てきたインドの高速鉄道からいよいよ手を引くべきだとの声が高まっていると指摘。日本メディアが「インド高速鉄道受注の興奮はとっくに冷め、今や工事期間がだらだらと延び、人件費が増える一方。どれだけの損が出るか計り知ることができないプロジェクト」「プロジェクトの収益は予想に遠く及ばない上、経営リスクも大きく増えている」などと評したことを紹介して「インド初の高速鉄道はインド、日本双方にとって悲劇と言える」とした。
記事はその上で、インド高速鉄道の受注をめぐる日本と中国の争いや、日本が破格のオファーを出して逆転で受注を勝ち取った経緯について紹介。17年には当時の安倍晋三首相が自らアーメダバードに赴き、モディ首相とともに着工式に参加したことに触れ、日本が是が非でも受注を勝ち取ろうとした背景には「外交上でインドを抱き込み、米国のインド戦略に協力する」「中国の高速鉄道海外進出の空間を抑え込む」といった狙いがあったとの見方を示している。
また、モディ首相も自らの政治基盤固めのために高速鉄道建設を積極的に進め、一度はインド国民に「間もなく高速鉄道時代がやってくる」と期待を抱かせたものの「間もなく25年になろうというのに一向に開通できない。もはや世紀の頓挫プロジェクトだ」と指摘。工事が遅々として進まない最大の要因は、20年現在で40%弱しか実現していない用地収容問題であり、ほかにも「先延ばしして1日でも多く給料をもらおう」と考える現地労働者の退廃的な作業ぶり、新型コロナによるコスト激増といったさまざまな問題が山積していると伝えた。
記事は最後に、インドの高速鉄道を失注した中国がアジアを中心とする他国で続々と高速鉄道建設を進めていることに触れ、「インドが日本に高速鉄道建設を頼んだのはそもそも戦略上のミス。そして、日本が損を覚悟してまでインドの高速鉄道建設を支援しようとしたのは笑い話。日本の失敗を戒めとして、われわれはくれぐれもインドのインフラ建設に心を配ってはならない」と結んだ。(編集・翻訳/川尻)
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