米紙・ウォールストリートジャーナルは10日、飢えから逃れるためロシア派兵命令に「ありがたく従った」北朝鮮兵士たちもいたはずだとする、軍出身の脱北者の声を伝えた。
2019年に脱北したユ・ソンヒョンさん(28)は記事中、仮に自分が兵役中にロシア派兵命令を受けたとすれば命令にありがたく従ったと述べている。
ユさんは自らが北朝鮮軍にいた当時、まともな食事もなく建設現場などで重労働を強いられたとし、ロシア派兵命令を受けたとすれば「少なくとも食事は今よりマシなはず」と考えたと思うとしながら、今回派兵された兵士らも同じように考えたはずだと分析した。
北朝鮮軍で飢えを経験した脱北者の証言や分析には重いものがあり、北朝鮮の兵士らが、彼らの予想したとおりの行動を取った可能性は高い。
実際、北朝鮮軍内では「飢えと恐怖」の連鎖が起きている。
韓国のNGO、軍人権センターが2020年12月に発表した「北朝鮮軍人権実態調査」報告書には、4例の軍隊内で公開処刑に関する目撃証言が収められている。そのうちの2例について、処刑に至った原因が述べられているのだが、いずれもが「飢え」による盗みやトラブルに関するものだった。
そのうちの2006年のケースは、民間人に対する強盗を働いたうえで脱走を試みた兵士が取り調べを受け、絞首刑に処されるまでの過程を撮影した記録映画を見たとする証言である。3カ月の初期訓練を終えた新兵たちに、団体で見せていたというから驚愕せざるを得ない。
その映画の最後の場面で件の兵士は、執行の直前、泣きながら土下座をし、「皆さんは絶対に私のようになってはいけません。私のように良からぬ考えを持つと私のような人生を生きることになります。申し訳ありません!」と懺悔するのだという。
この映画に記録された刑の執行場面が、本物なのか、あるいは新兵たちを恐れさせるための「フェイク」なのかは検証のしようもない。
しかし確実に言えるのは、北朝鮮軍において、飢えと恐怖はつながった要素であるということだ。栄養失調のために絶命するのも恐怖だし、飢えから逃れるため仕方なく犯罪に走れば、厳罰が待っていることも恐怖なのだ。
そのような状況で、ウクライナ軍との凄惨な戦いを想像し、飢えと戦闘の恐怖をてんびんにかけることのできる兵士は多くはないだろう。
そんな兵士たちが実際の戦闘に直面したとき、果たして何を思うのだろうか。
コメント