2024年11月11日、シンガポール華字メディアの聯合早報は、各プラットフォームのキャンペーンによりオンライン消費需要が高まる「ダブル11(11月11日)」を迎えるのを受けて、その陰で暗躍する「職業的クレーマー」の現状について伝えた。
記事は初めに「ダブル11が間近に迫り、オンライン消費需要が高まっているが、それは同時に職業的クレーマーが1年で最も盛んに活動する時期を迎えることも意味している。各プラットフォームでは近頃、職業的クレーマーを自称する者が増えてきている。彼らは1日で1000元(約2万1300円)以上、月に1万元(約21万2300円)以上稼ぐだけでなく、そのノウハウを伝える生徒まで募集し、売買件数が膨れ上がるダブル11期間中に隙をついて売り手をだまし、狙った獲物から金品を巻き上げようとしている」と紹介した。
続けて「職業的クレーマーの授業料は、10元(約210円)から1000元(約2万1300円)まで幅がある。生徒が授業料を払うと、職業的クレーマーから過去のクレーム事例、クレームのロジックなど、相手からお金をむしり取るノウハウをオンラインで習うことができるという。それだけでなく、逆に売り手側に職業的クレーマーから身を守る方法を教える者もいるという。彼らの行為は明らかに詐欺や恐喝にあたる犯罪行為で、刑事責任や行政的処罰は免れないと指摘する専門家もおり、中国社会でも警戒を促す世論が高まっている」と述べた上で、「職業的クレーマーはこれまで長きにわたって議論の的となってきた。なぜなら彼らは法律のグレーゾーンを立ち回る存在で、彼らを市場の乱れを正す掃除屋と見る者もいれば、投機的に暴利をむさぼる者と非難する者もいる」と述べた。
次に記事はWeChatのアカウントを通じて、「150人以上の弟子がいる」という職業的クレーマーを取材し、ダブル11の期間こそ稼ぎ時で、弟子たちも最も良い成果を上げる時期であることや、授業料として1人2000元(約4万2600円)取っていること、多くの弟子たちと一緒に売り手に賠償を請求するやり方は、人数が多いほどより高い金額を受け取ることができることができ、1回の取引で10万元(約212万3000円)以上もせしめることができたことなどの回答があったことを伝えた。また別の職業的クレーマーからは、授業料300元(約6390円)で教材を配布し、商品の金額が小さければ小さいほどクレームを入れやすく、売り手も賠償請求に応じやすいことや、実際の賠償金額は売買双方の話し合いで決まること、授業料を納めた生徒たちとグループチャットを利用して、クレームを入れやすい問題がありそうな商品のリンクを貼りつけるなどして、チャットの参加者と一緒に商品を注文するか否かの検討や、クレームを入れる計画や対策を相談しているなどの回答があったという。
記事は職業的クレーマーが活動できる背景として、2009年に制定した「食品安全法」や13年の「消費者権益保護法」の規定などに言及し、「食品安全法第148条には、損害賠償額について、製品価格の10倍または損害の3倍までと規定されている。消費者権益保護法には消費詐欺に遭遇した場合、賠償額を商品代金の3倍まで拡大するという規定がある。また広告法第57条には過剰な広告や宣伝を禁じる為の用語の使用禁止規制があり、違反者に20万元(約426万円)から100万元(約2129万円)の罰金が課せられるという。ほとんどの職業的クレーマーがこの規定に従って賠償請求を行っている。もし売り手側が強気で商品のクレームに応じなければ、各プラットフォームや消費者センター『12315』へ電話するなどで告発すると圧をかけるという。このような事態に遭遇した売り手側は、ほとんどが賠償請求を受け入れ、金銭的解決を図るという」と伝えた。
記事は最後に「職業的クレーマーの問題は近年深刻さを増している。中国連鎖経営協会(CCFA)の統計によると、昨年度で73万件あった賠償請求の訴えの中に、食品を理由とした悪意ある投書が22万件存在し、約2万4000人の職業的クレーマーが関わっていたことが判明したという。他にも重慶の市場管理当局の職員から得た回答によると、二大フードデリバリー電子プラットフォームの美団(Meituan)と餓了麼(Eleme)の経営許可に違反しているなど、飲食関係の賠償請求に関する訴えが700件以上も寄せられたという。これらの訴えを立証するために、行政当局側は調査や記録、法令の改正等で多くのマンパワーや時間を通常業務に追加して割くことになる。職業的クレーマーの存在は企業経営だけでなく、行政や法秩序の維持に大きな負担を強いる。逆に職業的クレーマー側の告発にかかるコストは非常に低く、ネット上で少し手や指を動かせば、業者や売り手を威嚇し、当局に大量の告発情報を送りつけ、高額の賠償金を得る」と指摘した上で、「政府は消費を促すと同時に商業の信頼を取り戻させる必要に迫られている。多くの業者や売り手が詐欺や恐喝に相対し、社会資源が不法に占拠されている状況で、消費者の権益を保障するとともに業者や売り手の権益とのバランスも考慮する必要がある。消費者を陥れる行為は処罰しなければならないのは当然だが、あまりにも消費者の権益保護に偏りすぎると、かえって職業的クレーマーがはびこる隙間を与えることになるだろう」と述べた。(翻訳・編集/原邦之)
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