中国南部・広東省珠海市で11日夜、自動車が暴走して多数の人をはね、地元当局は35人が死亡し、43人が負傷と発表した。中国では最近、各地で凶悪事件が頻発。9月には広東省深セン市の日本人学校に通う男子児童が男に刃物で刺され死亡した。何かがおかしく、やり場のない怒りや不満が鬱積(うっせき)しているかにも見える。

当局によると、珠海の事件は11日午後7時48分、市中心部に近い香洲区のスポーツ施設で発生。62歳の男の運転する小型のSUV(スポーツ用多目的車)が敷地内に強引に乗り入れ、歩行者道路で運動をしていた人たちに突っ込んだ。

香港紙・明報が伝えた目撃者の話では、車は行ったり来たりして多数の人をはねた。現場には靴や帽子、バッグが散乱。多くの人が血を流して倒れ、動かない状態だった。

男は車内で刃物を使い自殺を図った。病院に搬送されたが、首などに重傷を負っており、意識不明で取り調べができる状況ではないという。

犯行の動機について、当局は「離婚後の財産分与への不満」と公表。いち早い公表は異例で、政府などへの怒りや不満ではなく、あくまで個人的なものと強調する狙いがあるとみられる。

珠海では12日から中国最大の航空ショー「中国国際航空宇宙博覧会」が開幕。国内外のメディアが前日から訪れていた。注目を集めるため事件を起こした可能性もある。

中国のSNSでは事件に関する投稿が制限されたが、事件は広く知られた。国営の新華社通信によると、習近平(シー・ジンピン)国家主席は「事件は極めて悪質」として、負傷者の治療や被害者とその家族のケアに全力を挙げるよう指示。関係部門に対しリスク管理を強化し、過激な事件の発生を厳重に防ぐよう求めた。習氏の指示を受け、中央政府は現地に人員を派遣した。

珠海や深センに限らず、中国では上海市内のスーパーマーケットでも男が無差別に客らを切り付け、3人が死亡、15人が負傷した。10月には北京の名門小学校付近で、5人が刃物で襲われて負傷する事件が起きた。

珠海と同様の事件は日本でも起きたことがある。2008年6月、東京・秋葉原交差点に赤信号を無視した2トントラックが突入。通行人を次々とはねた上、運転していた当時25歳の男はナイフで付近にいた人をナイフで刺し、計7人が死亡した。死刑となった男は自らの境遇に不満を抱いていたとされる。

一連の事件とは趣を異にするが、中国河南省では大学生が夜中に肉まんを求めて約50キロをサイクリングするのがSNSで取り上げられて流行。今月8、9日には20万人以上が一斉走行した。

共産党系メディアは当初、好意的に扱っていたが、若者らが自然発生的に集まり政府への抗議活動に発展するのを警戒してか、地元当局が規制に乗り出した。背景にあるのは中国経済が減速する中、深刻な社会問題になっている若者の就職難だ。(編集/日向)

中国では最近、各地で凶悪事件が頻発。広東省珠海市では車が暴走して35人が死亡し、43人が負傷した。何かがおかしく、やり場のない怒りや不満が鬱積しているかにも見える。