法廷が演説会場と化した。4月の衆院東京15区の補欠選挙で相手候補の選挙活動を妨害したとして公職選挙法違反(自由妨害)に問われた政治団体「つばさの党」代表の黒川敦彦被告(46)ら3人の初公判が11月20日、東京地裁で行われ、3人は「正当な政治活動だった」などとして無罪を主張したのだ。
「逮捕当時から無罪主張だったため内容自体に驚きはありませんでしたが、黒川被告だけで30分近くしゃべり続けました。長期の勾留生活でたまっていたストレスを一気に発散したようでした」(司法担当記者)
黒川が長広舌の場に選んだのは、なんと罪状認否の場面。被告に罪を認めるかどうかなどを手短に聞くのが本来で、普通は無罪主張でも有罪主張でも「認める」「認めない」の一言、二言で済ませるため、数分で終わる。
「私たちのことを『迷惑系Youtuber』だと思っていませんか?」黒川らの行動がいかに突飛か分かるが、その内容は大真面目なものだった。
後に本人のⅩにも投稿された演説は「私たちのことを『迷惑系Youtuber』だと思っていませんか?」との問いかけで始まった。その後、事件に関する5つの論点について詳しく述べ、最後に「表現の自由、政治活動の自由に基づき、我々は無罪です」と締めくくる4000字以上の大演説だった。
「その後の裁判では、自分たちが大音量で相手陣営に突っかかっている様子が動画で示されると爆笑し裁判官に注意されていましたが、黒川がしゃべった内容自体は弁護士のお株を奪うような本格的なものでした」(同前)
「もうつばさの党は終わりだ。後は…」4月の補選でタレントの乙武洋匡候補に不倫疑惑について問いかけ、応援演説にかけつけた小池百合子都知事には「学歴詐称」を問いただす。さらには立憲民主党などの候補の選挙カーを追い回した行為などが選挙妨害にあたるとして起訴された3人。刑事裁判に詳しい弁護士は、「黒川らの主張は荒唐無稽ともいえません。選挙での表現は、表現の自由の中でも特に尊重されるべきものですから。代理人に就いた趙誠峰弁護士は刑事弁護のビッグネーム。その指南もあったのでは」と推測する。
幾多の無罪判決を勝ち取っているだけでなく、捜査当局と激しく闘うスタイルでも知られる趙弁護士。
「今回の事件でも、保釈が認められなかったことで黒川が7月にあった都知事選で十分な選挙活動ができなかったなどとして国を提訴した」(同前)
ただ、永田町関係者の目は冷ややかだ。
「無罪を争って裁判が長引けば、それだけ選挙に出て勝つ可能性も減る。もうつばさの党は終わりだ。後は選挙手法を真似する変な輩が出ないことを祈るだけ」
折れたつばさが再び羽ばたくことはなさそうだ。
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