この記事をまとめると
■トヨタ・クラウンは現行で16代目を数える超長寿モデル
■そのなかでも筆者は12代目「ゼロクラウン」をベストデザインに推す
■「静から動」への変革をテーマにスポーティさと高級感を高い次元で両立している
ベストなデザインをもつクラウンを選ぶ
長寿モデルをはじめ、何代かに渡って販売されるモデルはそれぞれの時代を反映させたコンセプトが盛り込まれており、もちろんそれはスタイリングにもいえること。そこで、そんな各歴代のなかからあえてベストデザインを選んでみるのがこの企画です。何しろ個人的な意見ゆえ、苦情反論は受け付けませんので悪しからず(笑)。
●静から動への変革をカタチにする
さて、記念すべき? 第1回目に取り上げるのはトヨタのクラウンです。クロスオーバーやスポーツなど、大きく舵を切った現行の16代目まで続く文字どおりの長寿モデル。じつに選び甲斐のあるモデルですが、そこで筆者が選んだベストデザインはズバリ12代目です。
2003年に発売されたこのモデルは、ご存じ「ゼロクラウン」として知られています。グローバル化の波を受けて志向の細分化が進むなか、いわゆるセダン離れに危機感をもったトヨタが、ユーザーの若返りを狙って開発。「かつてゴールだったクルマが、いまスタートになる」というキャッチコピーがその背景と意気込みを示しています。
商品コンセプトの「静から躍動への変革」を受け、プラットフォームからエンジン、サスペンションなどを一新。先代比20mm増の全長に対し、ホイールベースはじつに70mm増。さらに、前後オーバーハングをそれぞれ10mm、20mm短縮することで、安定感のあるスポーティな佇まいを獲得しました。
フロントは一見オーソドックスですが、低いフードとバランスのいいランプ・グリルの配置が秀逸。とくに異型ランプは、上級車らしい高級感とスポーティな鋭さのさじ加減が絶妙です。ロアグリルも決して派手ではないものの、しっかり安定感を打ち出しました。
歴代屈指の均整のとれたデザイン
●高級感とスポーティさを高次元で融合
一方、「書の勢い」をテーマにしたサイドビューは、フェンダーから始まる強い張りのショルダーラインが、これまた高い安定感と力強さを表現。リヤビューは、サイドにまわり込んだ台形のテールランプが抑制の利いた動感を表現しています。
また、当時はトヨタのインテリアデザインが絶好調の時期で、作り込みのよさと巧みな色使いにより、豪華さと先進感がじつに巧く融合した内装になっています。この時期は、ニュー・センチュリー・バリューを謳ったカローラなども同様に秀逸でした。
そして、こうしたスポーティさや力強さを織り込んだボディが、極めてシンプルにまとまっていることがキモです。プレスドアなどは使っていませんが、非常に高いカタマリ感もあって、360度どこから見ても破綻がありません。
これは、さらなるスポーティ路線を狙い「CROWN Re BORN」を掲げた14代目が、派手なグリルやキャラクターライン、ピンク色の設定など、基本を疎かにしてしまったこととじつに対照的であり、カーデザインの奥深さを物語っているところです。
●記念碑的なふたつのモデル
さて、今回はベストデザインとはしませんでしたが、クラウンのデザインを語るとき、1983年発売の7代目にも触れておいたほうがいいかもしれません。バブル景気前夜、流行の4ドアハードトップを採用した煌びやかなボディは、特徴的なクリスタル・ピラーも相まって、時代を象徴するスタイリングを提示しました。
まあ、いってみれば「売れるデザイン」ですが、それはそれで評価するべきでしょう。なにより、「いつかはクラウン」でヒットした同車ですが、そのゴールをひっくり返したのが今回の12代目だったという点が、皮肉というかじつに面白いところなのです。
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