韓国の尹錫悦大統領が3日夜に発令した戒厳令を4日早朝に解除すると表明したことを受け、野党議員らによる弾劾の動きが強まっている。
尹氏は3日夜の緊急テレビ演説で、野党・共に民主党が国政をマヒさせ、危機に陥れていると非難した上で、「従北反国家勢力」を一掃するとして非常戒厳を宣言。これに反発した国会は議員300人のうち190人が出席して解除要求決議を採決し、全員の賛成で可決した。
今回の事態のキーワードのひとつが、「従北反国家勢力」であることは間違いない。以前から、尹氏がこの言葉を口にするたびに、「誰を指しているんだ」と議論を呼んできた。
以下は、尹氏の「反国家勢力」発言の主な例だ。
●2023年6月28日、自由総連盟創立69周年記念式典での演説
「歪曲された歴史意識、無責任な国家観を持つ反国家勢力は、核武装を高度化する北朝鮮共産集団に対する国連安保理制裁を解除してほしいと泣訴するとともに、国連軍司令部を解体する終戦宣言を歌って回った」
●2023年8月15日、光復節の祝辞
「共産全体主義を盲従しつつ、操作扇動で世論を歪曲し、社会をかく乱する反国家勢力が依然として大手を振っている。自由民主主義と共産全体主義が対決する分断の現実にあって、このような反国家勢力の蠢動(しゅんどう)は簡単には消えないだろう」「共産全体主義勢力は常に民主主義運動家、人権運動家、進歩主義行動家に偽装し、虚偽扇動と野卑で倫理破壊的な工作を事としてきた」
●2023年8月21日、乙支国務会議
「北朝鮮は開戦当初から偽装平和攻勢やフェイクニュースの流布、反国家勢力を利用した宣伝扇動で激しい社会混乱や分裂を引き起こすだろう」
●2023年9月15日の仁川上陸作戦戦勝記念式典
「共産勢力とその追従勢力、反国家勢力は、虚偽でっち上げと宣伝扇動で我々の自由民主主義を脅かしている」
●2024年3月26日の国務会議
「天安艦撃沈を否定することは国家安保を破壊し、国民の安全を脅かすこと」「反国家勢力が国家安保を揺さぶり、国民の安全を脅かさないよう、我々みなが力を合わせなければならない」
●2024年8月19日の乙支国務会議
「虚偽情報やフェイクニュースの流布、サイバー攻撃のような北朝鮮のグレーゾーン挑発に対する対応態勢を強化しなければならない。韓国社会の内部では、自由民主主義体制を脅かす反国家勢力があちこちで暗躍している。北朝鮮は開戦初期から彼らを動員し、暴力と世論操作、そして宣伝、扇動で国民的混乱を深めるとともに、国論の分裂を図るだろう。このような混乱と分裂を防ぎ、全国民の抗戦の意志を高める方策を積極的に講じなければならない」
これらの発言を見ても、どのような定義で使われているのかはいまいちハッキリしない。いずれにせよ、尹氏を戒厳令宣布という「暴挙」に突き動かし、政治的な破滅に追い込んだのは、反国家勢力に対する憎悪だったということだ。
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