家計管理は妻に任せて、自分はお小遣いでやりくり。ランチ代や趣味費を節約をして家計を支えているというサラリーマンも少なくないでしょう。それもすべては家庭のため……。そう頑張ってきても、定年を前にとんでもない事態が判明するケースもあるようです。

お金の管理方法はさまざま…お小遣い制サラリーマンの懐事情

家庭によってお金の管理方法はさまざまです。夫婦の財布を1つにしてお互いの収入をオープンにしつつ管理している家庭もあれば、「夫の収入をはっきりとは知らない」「専業主婦で夫から必要な分をもらっている」というケースもあります。

「毎月決まった額を家庭用の口座に入れ、それ以外は各々が管理」という家庭もあるでしょう。共働きの増加に伴い、自分で稼いだお金は自分で管理したいという人も増えているのかもしれません。

一方で、昔からよくあるのは、妻が家計の手綱を握り、夫は毎月決まったお小遣いでやりくりするというスタイルです。使い過ぎを防ぎ、確実に管理ができる方法といえます。

では具体的に、世のサラリーマンは毎月いくらぐらいのお小遣いでやりくりしているのでしょうか。SBI新生銀行による『2024年サラリーマンお小遣い調査』。これによると、男性会社員のお小遣い額の平均は月3万9,081円。ただし、年代によって多少のばらつきがあります。

 

あなたの1カ月のおこづかいはいくらですか?(昼食代含む)

・男性平均…3万9,081円

・20代男性…4万373

・30代男性…3万6,196円

・40代男性…3万6,089円

・50代男性…4万3,453円

出典:『2024年会社員のお小遣い調査』(SBI新生銀行)

上記の通り、20代と50代がやや多く、30代と40代は少ないという結果に。子どもの生活費や教育資金に最もお金がかかる時期にはお小遣いも少なくなる。そんな事情があるのかもしれません。

また、同調査によれば、1日の平均昼食代は以下の通りです。

昼食代(勤務日)は平均すると一回いくらですか?(弁当持参や、在宅勤務でお昼を作る時除く)

・男性平均…709円

・20代…723円

・30代…749円

・40代…657円

・50代…707円

出典:『2024年会社員のお小遣い調査』(SBI新生銀行)

場所や店にもよりますが、物価高の影響もあり外食費はどんどん値上がりしています。コンビニエンスストアやスーパーのお弁当も、量は減ったのに金額は高くなった……なんて声を聞くことも。

上記のような金額に収めるため節約の積み重ねで家計を支えている……そんなサラリーマンは少なくないのではないでしょうか。

しかし、涙ぐましい努力をして家族を養ってきたサラリーマン人生もようやく終盤、年金暮らしも見えてきた段階で、とんでもない事態が判明することも……。例えばこんなケースです。

お小遣い月2万5,000円、家族のために頑張ってきたつもりが…

都内の中小企業に勤める佐藤和夫さん(仮名・63歳)は、あと2年で会社を退職予定です。地方の大学を卒業し、東京に出てきて就職。32歳で同じ年の妻と結婚しました。妻は出産を機に専業主婦に。子ども2人は大学を卒業し、すでに独立済みです。

佐藤さんの最高年収は700万円程度でしたが、会社の業績悪化もあり、40代半ばをピークに右肩下がりに。60歳で継続雇用になったことで一気に350万円まで減りました。給料は減ったのに仕事の負担はまだまだ重たく、ため息をつくことも。

それでも、もうすぐこの生活も終わり。老後は読書をしてゆっくり過ごしたい……。そのために少しでも稼いでおこうと仕事に励んでいました。

佐藤さんの家では、子どもができたタイミングで家計管理を妻に一任していました。それからは、年収が上がろうと下がろうとお小遣いは月2万5,000円。お昼は1日あたり600円までと決め、部下にご馳走しなければならない場面もありましたが、それでも家族のためにとやりくりをしていました。

そんな佐藤さんに悲劇が訪れます。ある日、妻が折り入って話があると神妙に言うのです。そして、通帳を見せながらこう言いました。

「これが我が家の全財産です」

佐藤さんは仰天しました。60歳の時に退職金も受け取り、多少減ったとしてもそこそこあるはずの残高は、200万円と少しだけだったからです。

「穏やかな老後」が消え去る妻の告白

事情はこうでした。佐藤さんから家計管理を任されていた妻は、それをいいことに友人と豪華ランチに行ったり、買い物をしたりすることをひそかに楽しんでいました。物静かで自主的にお小遣い制を取る夫には、とくに気を使う必要もないと考えていたようです。

妻は夫の給与全額を預かっていたものの、実際には家計管理は苦手でした。収入と支出のバランスを考えられず、子どもの教育費や習い事にお金をかけ、分譲マンションも妻主導で購入。それでも、夫は妻がやりくりしているのだから大丈夫だろうと任せていたのでした。

そんな生活ですから、佐藤さんの収入が徐々に減っていったこともあり、貯蓄は一向に貯まりません。退職金は入ってくるけれど、住宅ローンの残債を返済すれば残金はほとんどなくなります。いざ老後がやってくれば、この事態はすぐに夫にばれてしまう……。

そんなとき、SNSを通じて知り合った女性から投資話を持ち掛けられ、つい話にのってしまったというのです。投資話を勧められる前には、かなり長くメッセージのやりとりもしており、悩みも親身に聞いてくれたことから、すっかり信じてしまったのだとか。

「資産運用が必要な時代だとか、よく言うじゃない。それであな他の退職金で投資したら最初はものすごく利益が出たのに、どんどん損失が大きくなって、取り戻そうとしてやめられなくて……」

「なんてことをしたんだ」「老後はどうなるんだ」もちろん怒りはありました。しかし、お金のこと以上に、自分は家庭のためにと思って働き、お小遣いも最小限で頑張ってきたのに、妻はそれに感謝もしていないことに気づき、ショックを受けたのでした。

むしろ「私も家計のことを考えてやったんだ」「あなたの稼ぎが悪いから」と責められる始末。自分としては精いっぱいやってきたつもりの佐藤さん。しかし、その気持ちは妻に届かず、老後の先行きもまったく見えない状態になったのでした。

家計すべてを相手に預けることは信頼関係あってこそでしょう。自分はギリギリのお小遣いで頑張ってる、すべては家庭のため。そう心で思っているよりも、夫婦できちんと話をすることのほうがずっと大切なのかもしれません。