『一分間に一万語—リングの死闘と新実存主義』

著者:ノーマン・メイラー

訳者:山西英一

出版社:河出書房新社

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 ソニー・リストンとフロイド・パターソンの世界ヘビー級タイトルマッチの一戦を、実存主義の視点でドキュメンタリー・タッチに描いた哲学書。一ラウンドで決着のついた(リストンの勝った)試合を目前にして、メイラーは、試合の展開や結末以前に存在していた二人のボクサーの「本質」(実存)を探ろうとする。また、その考察のなかで、「本質」を探り出そうとする自己の存在を喚起するボクシングというスポーツの素晴らしさを発見する。このメイラーの「視点」=「本質」=「実存」を、「人間(スポーツマン)の生き方」という卑俗な方向へ引き寄せると、日本の「スポーツ・ノンフィクション」と呼ばれるジャンルの書物が生まれる。前者はスポーツを通した「哲学」であり、後者はスポーツを通した「人間ドラマ」。前者にはスポーツに対する新たな発見があるが、後者には、とくにスポーツを題材に選ばなければならない必然性はない(他の題材でも同じような「ドラマ」は描ける)。その違いをはっきり認識して、題材がスポーツでなければ描けないテーマが出現するところから、新しいスポーツ・ノンフィクション、スポーツ文学が誕生するはずである。

 

 

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