交番の前を通ると目にするのが「重要指名手配」のポスター。決して珍しい存在ではない。
しかし以前X上では、埼玉県某所の自販機に掲出された指名手配ポスターに対して「書いても良いの?」と、疑問の声が寄せられていたのをご存知だろうか。
■張り紙の「4文字」に目を疑う…
ことの発端は11月後半、とあるXユーザーが投稿した1件のポスト(現在は削除済み)。
「DEAD OR ALIVEではないだろ」と意味深な1文の綴られた投稿には、「WANTED」という張り紙の掲出された自動販売機の写真が添えられている。
張り紙には「自販機荒らし」「大宮地区全体の自動販売機に被害が出ています」と書かれており、自販機の前に立った男性の顔写真が貼られていた。
そして、なんと「WANTED」表記の下には「DEAD OR ALIVE」と赤く記されていたではないか。
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■「デッドでも良いのか…」とツッコミ
「WANTED」(お尋ね者)と書かれた手配書は、『ONE PIECE』などの漫画作品でお馴染みの存在。顔写真の載った人物を捕えれば懸賞金が入手でき、「ONLY ALIVE」(生け捕りのみ)といった条件も記載されている。
つまり、今回の張り紙に記された「DEAD OR ALIVE」は「生死を問わない」という意味なのだ。さらに、張り紙の末尾には「情報の提供は大宮警察署 大宮駅前交番までお願いいたします」と書かれ、該当交番の電話番号が記されている。
そのためX上では「警察がこんな過激な張り紙を掲出したのか」と、瞬く間に話題に。「DEAD」の4文字に対し、Xユーザーからは「デッドしててええんか…」「埼玉は治外法権?」「流石に生死は問うてほしい」など、ツッコミが多数寄せられていた。
中には『ONE PIECE』に絡めて「埼玉県警=海軍」説を唱えるユーザーも見られたが、埼玉県に海は存在しないのがなんとも皮肉である。
そこで今回は話題の張り紙の真意をめぐり、埼玉県警察に詳しい話を聞いてみることに。すると、衝撃の事実が明らかになったのだ…。
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■11月上旬、警察に連絡が…
張り紙の末尾に書かれた電話番号は、実在する警察署の電話番号であった。
しかし、埼玉県警・地域総務課の担当者は「こちらの張り紙は、埼玉県警によって掲出されたものではございません」と、キッパリ否定する。
じつは、話題のポストが投稿される数週間前の11月上旬、件の自販機の管理者から「自販機が使えなくなった」という通報があったことが判明。警察官が現場へ駆けつけて事情を聞き、被害届の提出を勧めたそう。
そして今回、記者からの取材の打診を受け、埼玉県警が自販機について確認したところ、件の張り紙は「自販機の管理者が作成・掲出したもの」であることが明らかになったのだ。
埼玉県警の担当者は「我々が作成したものでも、許可したものでもございません」とも説明している。
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■警察の指導後は「剥がされていた」
今回の出来事で、注目すべき箇所は3点。
まずは「自販機に張り紙を掲出した」という点だが、こちらは管理者自身が掲出したもののため、警察側から禁止される道理はない。
しかし、今回話題となったように「埼玉県警(交番)が作成・掲出したもの」と誤解される可能性が高いことは、やはり問題である。そのため埼玉県警では管理者に対し、該当箇所を削除するよう指導を実施したそう。
また、顔写真の人物から「名誉毀損」で訴えられる可能性も存在する。埼玉県警が指導を行なった後日、警察官が確認した時点では、該当の張り紙は既に剥がされていたそうだ。
埼玉を地元とする身としては、埼玉県が「自販機荒らしの生死を問わない」ような修羅の国ではなく、ホッとした思いである。
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■執筆者プロフィール
秋山はじめ:1989年生まれ。『Sirabee』編集部取材担当サブデスク。
新卒入社した三菱電機グループのIT企業で営業職を経験の後、ブラックすぎる編集プロダクションに入社。生と死の狭間で唯一無二のライティングスキルを会得し、退職後は未払い残業代に利息を乗せて回収に成功。以降はSirabee編集部にて、その企画力・機動力を活かして邁進中。
X(旧・ツイッター)を中心にSNSでバズった投稿に関する深掘り取材記事を、年間400件以上担当。ドン・キホーテ、ハードオフに対する造詣が深く、地元・埼玉(浦和)や、蒲田などのローカルネタにも精通。
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