コーヒーにはただの嗜好品を超えた健康効果があることが次々と報告されている。新たな研究によれば、毎日適量のコーヒーを飲むことで、健康寿命が平均で1.8年延びる可能性が示された。
適量とは、欧州食品安全機関(EFSA)の基準によると1日400mgのカフェインで、コーヒー3~5杯に相当する。
コーヒーのカフェインやポリフェノールなど2000種類以上の化合物が、心血管疾患やがんといった死因のリスクを減らす効果をもたらすという。
これまで、年を取ったらコーヒーを控えるべきという考えもあったが、この研究を行ったポルトガル、コインブラ大学のチームは、コーヒーの適度な摂取が健康長寿につながるという。なお、当然個人差があることも留意しよう。
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適量のコーヒー摂取が健康寿命を平均1.8年延ばしてくれる
世界中で愛されるコーヒーは、すでに50本以上の研究によって素晴らしい健康効果があるだろうことが裏付けられている。
それらによるなら、心血管疾患・がん・呼吸器疾患・物忘れ・加齢による心身の衰え(フレイル)などなど、さまざまな症状を緩和してくれるという。
なんだか百薬の長とでも言いたくなるような健康効果が、科学的に裏付けられているのだ。
ポルトガル、コインブラ大学の研究チームは今回、そうした先行研究をレビューして、個々の症状だけでなく、健康全般に対するコーヒーの効果を探っている。
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その結果明らかになったのが、定期的にコーヒーを飲むと健康年齢が平均1.8年延びるということだ。
より大切なのは、それが健康年齢であるというところだ。つまり、ただ単に長生きできるというのではなく、健康的な生活を送れる時間が延びるのである。
研究チームによるなら、コーヒーの健康効果は性別によるバイアスが原因とする研究もあったという。それでも全体的には、定期的にコーヒーを飲むと男女ともに健康年齢が延びると言えるのだそうだ。
コーヒーに細胞の突然変異を抑制する効果
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ではなぜコーヒーには健康効果があるのだろう? 今回の研究ではこれについても調べている。
その結果、老化の引き金となるゲノムの不安定化や細胞の突然変異を抑えてくれるほか、通常の細胞機能を強化するなどして、私たちの健康を増進しているらしいことがわかった。
重要なのは、このレビューで対象となった研究は、人間や人体の組織を扱ったものに限られている点だ。
それゆえに、ここで明らかになったコーヒーの健康効果は、より確かなものと言うことができる。
これまで医師によっては、高齢者はコーヒーを控えるべきだと助言することもあった。
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だが、今回の研究チームは、レビューで明らかになった事実を踏まえて、コーヒーが好きな人なら、適量を飲んだ方が良いと考えている。
コーヒーには健康効果のある成分が2000種以上
なおコーヒーの成分といえば、カフェインが思い浮かぶが、じつはそれ以外にも健康効果が期待できそうな成分が2000種以上も入っている。
例えば、ポリフェノールは抗酸化作用や抗炎症作用があるため、神経炎症の緩和やインスリン感受性の調整といった効果を期待できる。
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ただし、そうした成分の詳しい働きはまだわからないことが多い。そのためコーヒーの健康効果については、今後もまだまだ研究を続ける必要があると、研究チームは述べている。
研究チームの1人であるポルトガル、コインブラ大学のロドリゴ・クンハ氏は、世界の高齢化が前代未聞のスピードで進んでいる現在、「より長く、より健康的に生きるための食事探しがますます大切になっています」と、プレスリリース[https://www.eurekalert.org/news-releases/1067082]で語っている。
これまでの医学は、コーヒーが健康的に歳を重ねるうえではたしてくれる役割を見落としてきました
ですが、コーヒーを定期的に飲むことで、社会問題となっている慢性的な疾患を和らげてくれるという強力な研究があるのです
おそらく今こそ、コーヒーを再評価するべき時なのでしょう(ロドリゴ・クンハ氏)
この研究は『Ageing Research Reviews[https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1568163724003994]』(2024年11月16日付)に掲載された。
こういった研究全般に言えることだが、統計的なものなので全員に当てはまるわけではない。比率的には少数だが、カフェインに耐性のない体質の人や遺伝的に受け付けない人もいることに留意しよう。
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