
ドジャースが10代選手との契約を白紙に
佐々木朗希の名は、今オフの日米両球界でトレンド化した。昨シーズン終了後にポスティングシステムを利用してのメジャーリーグ移籍を公表して以来、瞬く間に話題沸騰となった。
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今オフの米移籍市場はフアン・ソト(→メッツ)やブレイク・スネル(→ドジャース)、コービン・バーンズ(→ダイヤモンドバックス)など大物のFA選手も少なくない。その中で佐々木の存在は異彩を放つ。MLBの労使協定で決まった「25歳ルール」以下の23歳であるため、契約はマイナー契約に限定。さらに年俸や保証金も年間500万ドル(約7億2500万円)以下に制限されるため、獲得球団にとってみれば、青田買いに近い破格の安さなのだ。
大物代理人のジョエル・ウルフ氏のサポートもあり、20球団以上から関心を集めたという佐々木。一方で「令和の怪物」の移籍動静にはハレーションも広まっている。
というのも、前述のルールからMLBでは25歳以下の国際選手獲得の際に用いられる年間のボーナスプール内で契約をする必要がある。そのため、佐々木獲得を目論む複数球団が資金捻出のために、中南米の若手有望株との契約を先延ばしにするケースも出始めている。実際、ドジャースは今オフに契約金110万ドル(約1億7100万円)の契約で口頭合意していたドミニカ共和国の強打の遊撃手ダレル・モレル、同じく強打の外野手オーランド・パティーニョとの契約を白紙にしたと報じられている。
無論、佐々木側に非はない。彼らはあくまで現行ルールに乗っ取って、ポスティングシステムを利用したに過ぎない。むしろ、契約がマイナー契約に限定されるのは、アスリートとして少なからずリスクもある。
とはいえ、メジャーリーグ行きを目指す中南米の若手選手たちにとって、プロとしてNPBで5年の実績を持つ佐々木と同じ枠組みの中で契約を争う必要を強いられるのは、小さくない問題。ゆえにルールの変更を求める動きが強まっている。
ドミニカ共和国のメディア『Z101 Digital』のヘクター・ゴメス記者は、現地時間1月12日に、ドミニカ共和国の野球指導者たちがMLBに対し、各球団が使用する国際ボーナスプールの対象から「ロウキ・ササキのようなプロ選手を除外することを要望している」と伝えた。
中南米の野球事情に精通するゴメス氏は、自身のXでこうも綴っている。
「(佐々木の件で)ドジャースを含むいくつかの球団が、今のボーナスプールで獲得可能な最も大きな国際有望株との契約を失っている。また、ドミニカ共和国のような国でも混乱を引き起こしており、有望株とそのチームが一夜にして得たはずの資金を失っているのも目の当たりにした」
「ササキが受け取る金額は、以前にそのチームと契約することに同意していた選手たちの懐から出て行くことになる。ゆえにドミニカ共和国のトレーナーたちが彼を別の方法で扱ってほしいと考える理由は明らかだ。しかし、実際にこのような変更を実施するのは言うは易く行うは難しく、ササキのような選手は唯一無二の存在であるという事実を無視している。このような才能を持つ選手が、数百万ドルを諦めて、数年早くアメリカに来ることは稀だ」
16歳選手と佐々木の競合は「問題がある」
ゴメス氏は、すでに国際独立野球協会(AIBI)のMLBへの申し出は書簡を通じて行われたとも報道。さらに『Z101 Digital』も「国の最高クラスのプロレベルでの経験が豊かな選手が、(中南米の)最も基礎的なレベルの新人からプロとしてのキャリアをスタートさせようとする16歳の子どもたちと直接競合している点に問題がある」と指摘。「ササキのような選手の契約は、中南米の若い選手たちの契約が白紙にされるリスクに繋がる」と強く訴えている。
そして、一連の情報をふまえ、「間違いなくササキの契約は野球界の常識をひっくり返している」と論ずるゴメス氏はこうも主張する。
「おそらくMLBは訴えに耳を傾け、迅速に行動するだろう。このスポーツ界で最大かつ最も影響力のあるいくつかの球団が混乱に陥っており、そして誰もが苛立っている。ただ、今は誰もがこの嵐を乗り切らなければならず、変化が起きるのは早くても来年の冬になる可能性が高い」
繰り返すが、今回のAIBIの申し出に関して佐々木側に非はない。ただ、彼が10代のアマチュア選手と同様の扱いを受ける現状が混乱の原因となっている感は否めない。選手の待遇や契約をよりクリアにする意味でも、今回の騒動をきっかけにルールにメスを入れるべきではないだろうか。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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