
紫外線から肌を守るため、日常的に日焼け止めを塗る人も多いと思います。近年では、環境破壊を原因に、人体に有害な紫外線が増えており、環境省でも「紫外線健康保険マニュアル」を作成して、紫外線から身を守る方法について呼びかけています。
その中で、「衣類などで覆うことのできないところには、大人は勿論のこと、子供も上手に日焼け止めを使うのが効果的です」と、日焼け止めの利用を勧めています。
ところが、学校によっては、いまだに「日焼け止め禁止」というルールを設けているところがあります。SNSでは、「理不尽すぎる」と生徒や保護者たちから怒りの声が上がっています。
たとえば、「修学旅行に日焼け止めを持って行ったら荷物検査で引っ掛かり、夜中まで先生に説教された」「日焼け止めを塗っていたら先生に見つかり、成績を下げられた」といった声が寄せられています。
また、「日焼け止めを塗っていったら、『メイクしている』と先生に怒鳴られ、無理やりメイク落としシートでこすられて、肌荒れしてしまいました」という声もあります。
メイク禁止は一般的ですが、日焼け止めまで禁止する学校のルールや、無理やりメイク落としシートでこするような教師に問題はないのでしょうか。松本典子弁護士に聞きました。
●「ブラック校則」は「子どもの権利」侵害の怖れ——「日焼け止め禁止」は、「ブラック校則」と思われますが、法的な問題はないのでしょうか。
いわゆる「ブラック校則」には定まった定義があるわけではありませんが、「教育目的を達成するために必要かつ合理的範囲」かつ「社会通念上合理的と認められる範囲」を超えた、学校独自のルールは、「ブラック校則」といえると考えられます。
「ブラック校則」は、子どもの人権侵害につながる可能性、個人の尊厳を傷つけるおそれ、セクシャルハラスメント等にあたる可能性、学校への不信感、生徒間の序列や差別を生み出す等の問題をはらんでいます。
このような「ブラック校則」は、国連で採択され日本も批准している「子どもの権利条約」の4原則である、(1)生命、生存及び発達に対する権利、(2)子どもの最善の利益、(3)子どもの意見の尊重、(4)差別の禁止に反し、子どもの権利を侵害するおそれがあります。
●無理やり落とした教師は暴行罪に問える?——もしも無理やりメイク落としシートでこすられて、肌荒れしてしまった場合、教師は暴行罪に問われないのでしょうか。
暴行罪は、人の身体に対する有形力の行使があったときに成立しますが、教師の行為が、校則を守らせるための正当な行為として、違法ではないといえるかが問題になります。
判例では、校則について学校の裁量を幅広く認めるものが多いですが、例えば丸刈りの校則を憲法違反ではないと判断した判例も、憲法違反にならない理由として、“強制的に髪の毛をカットする規定がないこと”に言及しています。
強制的に校則を守らせるための行為は、正当な行為とは評価されず、暴行罪に問われる可能性があると考えられます。
●「ブラック校則」でつらかったら…——もしも理不尽な「ブラック校則」でつらい思いをしている場合、どのような解決方法がありますか。
同じような悩みを持つ生徒や、その保護者と連携して、学校に対して申し入れをすることや、学校のある地域の教育委員会や、市区町村の教育相談窓口に相談することも考えられます。
また、弁護士に相談して、学校や教育委員会に対して、法律の専門家の観点から申し入れをすることも考えられます。
【取材協力弁護士】
松本 典子(まつもと・のりこ)弁護士
歌舞伎町でキャバクラ嬢として働いているときに弁護士を志す。国際基督教大学教養学部理学科生物学専攻卒業。予備試験経由で司法試験合格。東京弁護士会所属。企業法務を中心に、男女問題、相続、刑事事件等幅広く取り扱う。現在はテーマパーク業界を中心とした横断的な法律問題や個人情報保護に注力している。
事務所名:松本中央法律事務所
事務所URL:https://www.m-laws.jp/

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