
アトランティスは古代ギリシアの哲学者、プラトンの著書にでてくる伝説の大陸だ。神々に導かれた理想郷が海中に沈んだという伝説は、数千年にわたり人々を魅了してきた。
この大陸は、多くの科学者から寓話とみなされてきた。しかし、最近の考古学的発見は、この伝説が単なる作り話ではない可能性を示している。
残念ながら、アトランティスそのものはまだ発見されていないが、近年発見された沈んだ山々や環状の遺跡、謎の金属など、その伝説を裏付ける手がかりともいわれる痕跡7つをみていこう。
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カナリア諸島沖で発見された「沈んだ山」
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研究者ルイス・ソモサのチームは、スペインのカナリア諸島沖で「ロス・アトランテス」と名付けられた沈んだ山(シーモント)を発見した。
この山はかつて海面上にあった3つの火山島を含み、5600万〜3400万年前に沈んだと考えられている。
この地理的特徴と沈没の過程が、プラトンが記述したアトランティスの運命と一致すると指摘されている。
今後、この火山岩の年代分析が、伝説との関係をさらに明らかにするかもしれない。

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場所:スペイン、カナリア諸島沖
年代:ロス・アトランテス山は約5600万〜3400万年前に形成されたとされる
発見年:2023年
アトランティスとの関連:沈んだ島々とその地理的な位置が、プラトンが記述したアトランティスの運命と一致している
ジブラルタル海峡近くの古代遺跡
2018年、民間の探査会社マーリン・バローズがジブラルタル海峡にほど近いスペインのドニャーナ国立公園沖で古代の遺跡を発見[https://nypost.com/2018/11/29/high-tech-search-company-claims-to-have-found-atlantis/]した。
この遺跡には、円形の基盤や神殿の跡と見られる構造物が含まれており、その年代は1万~1万2000年前までさかのぼるという。
この地域では津波と長い防波堤の痕跡も発見されており、アトランティスが大波に吞まれたという伝説と符合するのでは、と言われている。
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場所:スペイン、ドニャーナ国立公園沖
年代:約1万2000年~1万年前
発見年:2018年
アトランティスとの関連:円形の遺跡や神殿跡、津波の痕跡がプラトンの記述するアトランティスの特徴と一致する
シチリア島沖で発見されたオリハルコン
2014年、シチリア沿岸付近に沈没していた2600年前の船からオリハルコンの延べ棒40本が発見された。その後2016年にも、同じ沈没船付近でさらに47本のオリハルコンが回収された。
オリハルコンとは、プラトンが伝えるアトランティスの幻の金属のこと。ラテン語では「アウリカルクム」といい、古代ローマでは「真鍮」を意味していたことが知られている。
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古代ローマにおいて、金に似た輝きがあり、しかも丈夫なアウリカルクムは非常に高価だった。赤みがかったその色は、アトランティスの神殿や壁を彩ったとされるオリハルコンの記述とよく似ている。
またシチリア島は古代の交易路沿いにある。ローマがジブラルタル海峡西側にある強力な文明と交易するために利用していたとしても不思議はない。
場所:シチリア沿岸沖
年代:2600年前
発見年:2014年および2016年
アトランティスとの関連:オリハルコンの延べ棒は、アトランティスの建物の装飾として利用されていたという金属の記述と同じ
スペイン南部で発見された5つの石像
2023年、スペイン南西部グアレーニャにある3000年前の古代遺跡「カサス・デル・トゥルニュエロ」で、人間の顔を模した5つの石像が発見された。
この古代都市を建設したとされるタルテッソス人は、やがて歴史から姿を消したが、その理由はよくわかっていない。
だが彼らは、アトランティスとつながりがあるとされることもある。そうした説によると、タルテッソス人が姿を消した背景には、大洪水や噴火、あるいはバミューダトライアングルがあるのだという。
いずれも仮説に過ぎないが、石像の発見は、アトランティス伝説に関連し得る文明の謎を解明する手がかりとなるだろう。

場所:スペイン、グアレーニャのカサス・デル・トルニュエロ
年代:約3000年前
発見年:2023年
アトランティスとの関連:石像を作ったタルテッソス人は、突然姿を消したことから、アトランティスと関連付けられることがある
アイルランド沿岸の沈没島
2019年、アイルランド西海岸沖で沈没した島が発見された。
発見者である歴史家のマット・シブソンによれば、この島は「フリースランド」[https://www.irelandbeforeyoudie.com/atlantis-found-new-findings-suggest-lost-city-is-just-off-irelands-west-coast/]といい、16、17世紀までの地図に載っているが、それ以降消えてしまったのだという。
仮にこの島が海中に没したのだとすれば、まさにアトランティスがたどった運命と一致する。
フリースランドについてはその実在を疑う声もある。だがシブソンによれば、アイルランド西海岸にある無人島「ロッカル島」がその名残であると考えている。
アトランティスの位置については、地中海とされることが多い。プラトンは「ヘラクレスの柱」に言及しており、これはジブラルタル海峡の岬のことだとされている。
だがアイルランド西海岸沖も大西洋の一部であり、アトランティスがここにあった可能性は否定できない。

チピオナ沖の大規模な円形構造物
スペイン、チピオナ沖でそれが最初に発見されたのは、2013年のこと。ソナーによる調査で、水中に何やら異常が検出されたのである。
そして2023年、海中に高さ5~420mの壁のような円形構造物があることが判明[https://euroweeklynews.com/2023/10/01/divers-archaeologists-lost-city-atlantis-off-coast-chipiona-cadiz/]した。プラトンはアトランティスは同心円状の構造していると記しているが、まさにそれと同じなのだ。
チピオナ沖で発見された構造物は、おそらくは人工物だと考えられており、その一部には四角形や三角形の石も見られる。これもまたプラトンが述べた「人工島」という説明と一致する。
この構造物の正確な位置はまだ公開されていない。現在、研究者と地元当局が協力して、調査と保全を進めているところだ。

場所:スペイン、チピオナ沖
年代:不明
発見年:2013年および2023年
アトランティスとの関連:同心円状というプラトンの説明に一致、また、おそらくは人工物と考えられる点も、「人工島」という記述に一致する
サルデーニャ島のヌラーゲ
ヌラーゲはイタリア、サルデーニャ島に点在する巨大な石造の建造物だ。7000点以上が発見[https://www.theguardian.com/science/2015/aug/15/bronze-age-sardinia-archaeology-atlantis]されており、青銅器時代には礼拝所だったと考えられている。
メディオ・カンピダーノ県の標高499mより低い地にあるものは、ほとんどが壊れて埋もれている。その原因はかつて発生した大津波とされており、それゆえにアトランティス伝説と結び付けられてきた。
これまでの調査では、過去2500年の間に地中海で少なくとも350の大災害が発生した痕跡が発見されている。
一説によると、カリャリ県付近に彗星が落下し、それによって発生した津波がメディオ・カンピダーノ県を水没させたのだという。

場所:イタリア、サルデーニャ島
年代:紀元前16~12世紀
発見年:20世紀中頃、考古学者たちから注目されるようになった
アトランティスとの関連:本当に大津波によって破壊されたのだとすれば、プラトンが記したアトランティスの終焉と一致する

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