
法律では禁止されていない処方箋なしの医薬品販売を厚生労働省の通知が制限しているとして、東京都や福岡県で薬局を営む3社が1月17日、処方箋を交付されていない人に医薬品を販売できる地位があることを確認することなどを求める訴訟を東京地裁に起こした。
●本来は処方箋なしでも買えるはずが…原告の代理人によると、医薬品には大きく分けて「医療用医薬品」と「一般用医薬品」の2つがある。
このうち医療用医薬品にはさらに、医師が出す処方箋がないと入手できない「処方箋医薬品」と、処方箋がなくてもドラッグストアなどで購入できる「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」の2タイプがある。
薬の安全性を確保することなどを目的とした「薬機法」は、第49条第1項で処方箋医薬品の販売に関する規制を定めているが、「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」の販売については制限していないという。
しかし、厚労省は2014年3月、「薬局医薬品の取扱いについて」と題する通知を発出。「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」に関して、処方箋に基づく薬剤の交付が原則であることや、必要な受診勧奨を行う努力を求める内容が記載された。
厚労省は2022年8月にも通知を出し、販売できる条件を限定したり、薬に関する広告の表現内容を制限したりしたという。
●「零売薬局という職業を選択する自由を制限している」「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」を販売することは「零売(れいばい)」と呼ばれ、今回提訴した3社はいずれも零売薬局を経営する、あるいは経営していた会社だ。
原告は「2つの通知は薬機法の趣旨を逸脱した過剰な規制である」と指摘。裁判で、「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」を販売できる地位にあることや、「処方箋がなくても買える」などという表現で広告をすることができる地位にあることなどを求めている。
また、厚労省の通知が「零売薬局という職業を選択する自由を制限している」として、憲法22条1項に反すると訴えている。
●原告「零売は医療費の削減にも重要な役割を果たしている」この日、原告らが提訴後に記者会見を開いた。
原告の1社で、福岡市で零売薬局を経営する「まゆみ薬局株式会社」の代表取締役、山下吉彦さんは「零売は医療費の削減や、患者さんの利便性向上に寄与する重要な役割を果たしている」と説明した。
代理人の西浦善彦弁護士は、薬機法を改正して零売を原則禁止しようとする動きがあることに触れ、「何ら違法でない医薬品を購入する手段の一つが法改正によって禁止されようとしていることを国民のみなさんに知っていただくことにもこの訴訟の意義がある」と話した。

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