
火星の北半球で発見された「凍った豆」のような物体。だがこれを食べることはできない。実はこれ、炭酸ガスの霜に覆われた砂丘なのだ。
NASAの探査機が捉えた最新画像は、火星にかつて水が存在した痕跡を解明する手がかりになるかもしれない。
この砂丘が示す、火星の気候変動と生命の可能性を追う旅へ出かけよう。
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凍った豆?火星にある不思議な地形の正体
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2024年12月に公開されたNASAのマーズ・リコネッサンス・オービター(MRO)から送られてきた画像は、一見「豆」のようにも見える。茶色いから小豆のようだ。
その正体は、火星の北極にある砂丘が二酸化炭素(炭酸ガス)の霜に覆われた状態をとらえたもの。この撮影は過去火星に液体の水が存在した可能性を探る目的で行われた。
火星の北極には広大な砂丘が広がり、冬には炭酸ガスの霜がその上を覆う。この霜は砂丘を凍結させるが、春になると霜が完全に解け、砂が再び動き始める。
風が砂を一方向に積み上げたり、逆側から削り取ったりすることで、砂丘が徐々に移動していく。この現象は地球の砂丘の動きと似ているが、火星特有の要因により進行速度や規模が異なる。

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火星の氷は解けずに直接ガスに変わる
炭酸ガスの霜自体は水ではないが、その存在は火星の過去の気候を知る手がかりになる。
NASAのジェット推進研究所に所属するセリナ・ディニエガ氏によれば、「地球の春は水の氷がゆっくりと溶けるのに対し、火星ではすべてが爆発のように起こる」という。
火星の薄い大気では液体が地表に溜まることがないため、氷は溶けず直接ガスの霧に変わる。この急激な変化が激しい音と動きを生み出す。
火星の軸の傾きは地球に比べて非常に大きく揺れ動く。この揺れにより、炭酸ガスの氷が大量に昇華(固体が一気にガスに変わる現象)することがあり、火星全体に厚い大気を生み出すことがあったとされる。
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火星の砂丘が語る生命の可能性
そのぶ厚い大気が、液体の水が長期間存在できる環境を作り出した可能性がある。
炭酸ガスの霜がどのように形成され、消えていくのかを研究することで、火星がかつてどのような環境だったのかをより詳しく知ることができる。
火星の気候が変化し、水が安定して存在できる期間があったならば、その期間中に生命が生まれていた可能性もある
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NASAの探査チームは、こういった砂丘がかつての火星に存在した水や生命の痕跡を示しているのではないかと期待している。
液体の水が存在する条件は、単細胞生物や微生物のような生命が誕生するための重要な要素だ。
現在の火星は極寒で乾燥した環境だが、炭酸ガスの霜が作り出す地形やその変化を研究することで、生命の痕跡を見つけることができるかもしれない。
火星の一年の始まり
火星と地球の新年は異なる。火星では、2024年11月12日、太陽の周りを一周し、新たな年が始まった。
地球での687日が火星の1年に相当するが、その終わり方は私たちの想像を超えるものだ。
火星の北半球では春が訪れると、温度上昇により氷が薄くなり、崖から氷の雪崩が落下し、地面からは二酸化炭素のガスが爆発するように噴き出す。
これらの現象はNASAの研究者たちを魅了し、彼らが宇宙の「劇場」を追跡する理由にもなっている。
References: Avalanches, Icy Explosions, and Dunes: NASA Is Tracking New Year on Mars | NASA Jet Propulsion Laboratory (JPL)[https://www.jpl.nasa.gov/news/avalanches-icy-explosions-and-dunes-nasa-is-tracking-new-year-on-mars/]

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