※写真はイメージです(画像提供:ピクスタ)

この記事の画像を見る

ただ体を休めるのではなく、仕事のパフォーマンスを上げるための積極的な休み方に注目が集まっています。休日の過ごし方は人それぞれですが、体調を整えて健やかに働くには、どのように休めばいいのでしょうか。

ビジネスパーソンのための内科・心療内科「Stay Fit Clinic」の院長であり、『産業医が教える 会社の休み方』(中央公論新社)の著者でもある薮野(やぶの)淳也さんに、仕事に支障が出にくく、より効率的に働くための休み方を聞きました。

薮野淳也先生

なぜ「休養」が大事?

どんなにハードワークでも平気な人はいますが、そうじゃない人が多いですよね。働きすぎて体調を崩してしまっては、ちゃんとした社会生活を送れているとは言えません。仕事をする人にとって、「休み方」は「働き方」を考えることです。体調を整え、いい状態で仕事を続けることが大切です。

休日の「寝だめ」が良くないと聞いたけど…

休日の「寝だめ」が良くないのは、「ソーシャルジェットラグ=社会的な時差」が関係しています。「土日の2日間、何もしないで寝ていたら体がだるくなった」「ずっと寝ていて体は疲れていないから夜眠れない」といった経験はありませんか。平日の朝7時に起きている人が、土日に朝11時まで寝てしまうと、そこで4時間のギャップが生まれ、そのギャップが仕事のパフォーマンスを下げてしまいます。

1日何時間寝るのが理想的?

厚生労働省によると、適正な睡眠時間には個人差がありますが、どんな人でも6時間以上は寝たほうがいいとしています。睡眠不足は働く人のパフォーマンスを下げると言われていますので、できるだけ6時間以上は寝るようにしましょう。普段働いている時と同じような生活リズムの中で、睡眠を取ることが大切です。

休日は疲れていて動く気がせず、Netflixばかり見ているが、どうも疲れが取れない…

朝は寝だめをして、昼間から夜中まで動画を観るなどスマホ漬けになる、というのはよく聞くパターンです。その場合、一日中体を動かさないことも多いですよね。厚労省によると、健康の三大原則は「栄養(食生活)」「運動」「睡眠」。休日だからといって一日動かずにいると、かえって体がだるくなってしまうため、体を動かして健康的に休むようにしましょう。

どんな運動をしたらいい?

休日のどこかで、ちょっと息が切れるくらいの運動をはさんで体を疲れさせると、頭がリフレッシュされるというエビデンスがあります。体の循環を促してから寝るようにすると、効率的、効果的な休息になると思いますよ。

週末に仕事を持ち込まないほうがいい?

繁忙期で、週末も仕事をせざるを得ない人もいると思いますが、普段は9時から17時まで働いている人が、日曜日の深夜3時まで仕事をして、翌日7時には出勤のために起床する…という生活リズムになっていたら、明らかに働きすぎで良くない状態です。

「これ以上は働かないほうがいい」時のサインは?

働けば働くほど、体の負担は大きくなります。「仕事のことばかり考えて気が休まらない」「気が張って眠れない」「不安があって頭の中で考えがグルグル回る」という状態に陥っているなら、仕事の内容や量を調整したほうがいいですね。放っておくと、「適応障害(仕事など周囲の環境に慣れず、逃避反応を起こしてしまう状態)」を引き起こしかねません。

仕事の不安で眠れない時はどうすればいい?

朝起き、いい状態になってから仕事をするサイクルを作るために、睡眠薬を飲むという方法もあります。仕事が原因で体調を崩す人からよく聞くのは、グルグルと考えて眠れなくなるパターン。正直にいうと、グルグルしている時間がもったいないと思うんです。それならば、早めに薬を飲み、昼間にするべきことをして、生活リズムを整えるのがいいと思います。

睡眠薬は依存症になるという怖いイメージが…

一時期は強めの睡眠薬が主流でしたが、最近は自然と眠りに導入できて、眠れない時だけ服用できるようなマイルドな薬も出ています。もちろん、ちゃんと医師に判断してもらう必要はあります。心療内科やメンタルクリニックでご自身の体調を伝えてもらうと、まずはマイルドな薬を処方されることが多いと思います。それでも眠れないのなら、強めの薬を提案されるかもしれません。

薮野先生も睡眠薬を使っていたって本当?

クリニックを立ち上げた頃、不安や落ち込みというより、やりたいことがどんどん出てきて頭がグルグルと働き、不眠症になっていました。適応障害だという自覚もあったので、「寝ないと次の日に響くな」という時は睡眠薬を飲んで眠るようにしました。

ビジネスパーソンの理想の休み方は?

普段仕事をしている時と同じ生活リズムの中で、休むことが大切です。目安として、次の3つのルールを参考にしてみてください。

(1)「栄養」…1日3回の食事で、仕事で消費したエネルギーに見合ったカロリーをとること。

(2)「運動」…働く体力をキープするために体を動かすこと。散歩やジムなど続けやすいものでOK

(3)「睡眠」…普段の始業に間に合うような時間に寝て、朝ちゃんと起きること。

このような生活リズムを固めた上で、残りの時間は好きなことに使うといいと思います。

産業医・心療内科医からのメッセージ

仕事をしている人の「効果的な休み方」で第一に考えたいのは、働ける状態を保つことだと思っています。

「ご飯をしっかり食べているか」

「体を動かせているか」

「睡眠をちゃんと取れているか」

このようなセルフチェックをしながら、その日だけではなく、1週間の生活リズムの中で体調を整えていくのが理想的。休日は「スムーズに仕事に戻るための休暇」と考えましょう。

文=吉田あき

(プロフィール)

薮野淳也(やぶのじゅんや

産業医・心療内科医。1988年東京都出身。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、徳島大学医学部へ。認定産業医、認定スポーツ医、健康運動指導士、健康運動実践指導者。大手企業の産業医として日本オラクル株式会社のほか、スタートアップ企業から東証プライム上場企業まで、10社以上の様々な規模・職種の企業の産業保健業務に従事し、経験を積む。2023年より、南青山にビジネスパーソンのための内科・心療内科「Stay Fit Clinic」を開設し、院長を務める。得意分野は職場のメンタルヘルスと運動療法。

※写真はイメージです(画像提供:ピクスタ)