高岡の海外挑戦に大久保氏は「精神的にもタフになるし、プラス要素は多いと思う」と語った(C)産経新聞社

 東京国立競技場1月13日に行われた全国高校サッカー選手権決勝。歴代最多58347人の観客がかけつけた注目の一戦は、前橋育英(群馬)と流通経済大柏(千葉)がぶつかり合い、延長戦を終えても決着がつかず両者譲らないPK戦の末、前橋育英が7年ぶり2度目の優勝を飾った。

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 数々の熱戦が繰り広げられた大会は幕を閉じたが、今大会を最後に卒業する高校3年生の中には、さらなる高みを目指してプロの舞台に進んでいく選手たちがいる。準優勝の流通経済大柏のDF松本果成は湘南ベルマーレ、MF亀田歩夢はカターレ富山に。惜しくも準決勝で敗退した静岡学園(静岡)からはDF野田裕人が川崎フロンターレ、大津(熊本)からはMF嶋本悠大が清水エスパルスへと多くの選手がJ1をはじめとするJリーグのクラブに内定している。これ以外にもJリーグへ進む選手は多く、今後の活躍が期待される。

 そんな中、Jリーグではなく海外に活躍の場を求めた17歳がいる。世代最強FWとして名を馳せる高岡伶颯(日章学園)だ。身長165センチと小柄ながらも俊足を活かしたドリブルやどんな相手にも屈しないハードワークが魅力のストライカーだ。U―17、U―19など世代別の日本代表に選出され、欧州や南米の選手たちを相手にゴールを叩き込んで存在感をみせてきた。その実力が認められ高岡は卒業後、イングランドプレミアリーグサウサンプトンへ入団する予定だ。

 高岡は入団会見で「自分の目標はワールドカップで優勝すること。その目標に向けてふさわしいこのクラブ(サウサンプトン)での活躍というか、世界で活躍するエースストライカーになりたい」とこう力強く語った。また、「経験だけではおわらせず、試合に出て、ゴールを決めてA代表に入り、子どもたちに夢を与えられる選手になる」と強い決意ものぞかせた。

 近年は高岡のように若くして海外に渡ってキャリアを積む選手も少なくない。世界各国から高いポテンシャルをもった選手が集まり、そこには常に激しい競争がある。成長の速度も加速するため欧州では18歳から20歳と若い才能の台頭が著しい。

 かつて国見高(長崎)からJリーグセレッソ大阪を経てスペイン1部マジョルカドイツ1部ヴォルフスブルクなどでプレーした元日本代表の大久保嘉人氏に低年齢化する海外挑戦について聞いてみた。

「若いうちから海外経験を積むことはメリットしかない。違う文化、環境に飛び込めばいろいろ自ら考えて生活をしていくようになる。言葉ももちろん勉強しないといけないし、そういう意味でも若くしていろいろなことが経験できる。精神的にもタフになるし、プラス要素は多いと思う」

 大久保氏自身も22歳で海外移籍を経験してキャリアアップをはかってきたひとり。また私生活においてもプロサッカー選手を目指す2人の息子の海外挑戦をサポートしている。若いうちから世界に身を置くことの重要性を熟知する。

 一方で大久保氏はこうも話す。「ただリスクもある。練習や試合ではコミュニケーションはすべて英語やその国の言葉を使うし、サッカーに集中できる環境をひとりで作っていかなければいけないという問題もある。自分の時は高校時代、バイエルンからオファーが来たけれど、やはり実績、Jリーグで活躍してからとまずは足場を固めてからと思った。それがあっていまの自分がある」

 海外での挑戦は様々なリスクを背負う。しかし、肌で感じて吸収できるものは計り知れない。覚悟をもってイングランドへ飛び立つ17歳の挑戦を楽しみにしたい。

[文:槙野仁子]

卒業後サウサンプトン入団の高岡伶颯 低年齢化する海外挑戦に大久保嘉人氏「メリットしかない」