
世界的に活躍するイリュージョニスト「プリンセス天功」こと二代目引田天功さんが、使いきれない資産の一部を国内6カ所に埋めたことを明らかにし、話題となっています。
1月11日から配信されているネット番組「ABEMAエンタメ」密着取材企画の中で、引田さんがインタビューに答えたものです。
引田さんは、徳川埋蔵金にならい、「プリンセス天功埋蔵金」として国内6カ所に資産を埋めたといいます。その金額は、引田さんによると「仕事しなくてもいいと思います」ほどだそうで、夢のような話に注目が集まっています。
引田さんは「日本の方に見つけてほしい」と話していましたが、実際に発見した場合はどのような「手続き」が待っているのでしょうか。西口竜司弁護士に聞きました。
●発見したら警察へ——実際に「埋蔵金」を発見した場合、そのままいただいてしまってもよいのでしょうか。
埋蔵金と言えば、豊臣埋蔵金や徳川埋蔵金などロマンのある話がたくさんありますが、今回は引田さんの夢のあるお話について法的に解説をさせて頂きます。
埋蔵金について所有者がいると考えられる場合「遺失物」とみなされ、遺失物法が適用されることになり、発見者は警察に届け出る義務があります(同法4条1項)。
勝手に自分のものにしてしまうと、遺失物横領罪(刑法254条。1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料)に問われる可能性があります。
●「埋蔵金」だとわかったらそのままもらえる?——もし警察に届け出て、引田さんの「埋蔵金」だとわかった場合は、そのままもらえるのでしょうか。
この場合、「埋蔵金」自体は引田さんのものになりますので、そのままもらえるわけではありません。
ただし、発見者は、引田さんに対して「5%~20%の範囲で報酬」を請求する権利が生じます(遺失物法28条1項)。報酬額は、発見された物の価値や状況によって決定されることになります。
引田さんのものと確認ができなかった場合、民法241条本文の規定により公告をした後6か月以内に所有者が判明しないとして、発見者が所有権を取得することになります。
公告は警察に届け出た上で、基本的に警察署の掲示場に掲示することになります(遺失物法7条)。
●埋蔵金には所得税——引田さんが資産を埋めたのが、誰かの土地だったとします。そうした場合、発見した「埋蔵金」は土地の所有者にも分ける必要があるのでしょうか。
他人の土地で埋蔵金が発見された場合には、土地の所有者と折半することになっています(民法241条但書)。
なお、引田さんが他人の土地に資産を埋めても、埋蔵金が引田さんのものであることに変わりはありませんので、土地の所有者は引田さんに対して分け前を請求することはできません。ただし、引田さんは他人の土地の所有権を侵害していることになるので損害賠償請求をされる可能性はあります。
なお、埋蔵金を発見して自分のものになった場合の税金ですが、一時所得として所得税が課せられますので注意をして下さいね。
一時所得の税金の計算については、収入金額から支出した金額(発見にかかった費用)及び50万円を引いた金額の2分の1が所得金額になります。確定申告も必要です。
いずれにしても夢のある話です。私もいつか埋蔵金を掘り当てたいな。そんな夢を見ながら埋蔵された仕事に追われています。
【取材協力弁護士】
西口 竜司(にしぐち・りゅうじ)弁護士
大阪府出身。法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士をめざし多方面で活躍中。予備校での講師活動や執筆を通じての未来の法律家の育成や一般の方にわかりやすい法律セミナー等を行っている。SASUKE2015本戦にも参戦した。弁護士YouTuberとしても活動を開始している。今年からXリーグにも復帰した。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.kobemarin.com/

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