575年以上の歴史を持つイタリア、ミラノのスフォルツァ城は、当時の建築、芸術を語る上で欠かせない場所であると同時に、多くの謎めいた伝説を持つ場所でもある。

 そのひとつが、レオナルド・ダ・ヴィンチスケッチに残した、城の地下にあるという秘密のトンネルだ。

 このトンネルは溺愛する妻を亡くしたミラノ公が教会の墓に通うために作られたと噂されていたが、そのようなトンネルはいっこうに見つからなかったため、ただの逸話にすぎないと思われていた。

 ところが、最新の研究によって、この地下トンネルが実在することが確認された。ダ・ヴィンチの残したスケッチは、現実のものだったのだ。

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スフォルツァ城とダ・ヴィンチの関係

 現在のスフォルツァ城は、当時ミラノ公国を統治していたフランチェスコ・スフォルツァ[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%81%E3%82%A7%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%AB%E3%83%84%E3%82%A1]によって1450年に建設された城だ。

 この城は、1947年の政情不安で破壊された前の要塞の跡地に建てられたものだ。

 その後、1494年にフランチェスコの四男であるルドヴィーコ・スフォルツァ[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%89%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%82%B3%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%AB%E3%83%84%E3%82%A1]がミラノ公に就任すると、城はさらなる装飾と発展を遂げた。

フォルツァ城 Image by Dimitris Vetsikas[https://pixabay.com/users/dimitrisvetsikas1969-1857980/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=5054932] from Pixabay[https://pixabay.com//?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=5054932]

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 ルドヴィーコは城内を美しく飾るため、当時の著名な芸術家たちを招いたが、その中の1人にレオナルド・ダ・ヴィンチがいた。

 ダ・ヴィンチは数年間ルドヴィーコに仕え、城の装飾に貢献した。

 ルドヴィーコはダ・ヴィンチの初期パトロンとして最後の晩餐の作成を依頼したことでも有名である。

ミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会で撮影された本物の絵画「最後の晩餐」の写真 Photo by:iStock

 更にダ・ヴィンチは、ルドヴィーコの父、フランチェスコのための「騎馬像」を制作に取り掛かったが、この騎馬像は、最終的に未完成に終わった。

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 ダ・ヴィンチが残した秘密のトンネルのスケッチは、この時に描かれたものだという。

  城の地下構造の記録とともに描かれた彼のスケッチによると、そのトンネルは、城壁と外壁(現在は痕跡のみ)の間にあった回廊の地下から、約1km離れた教会、サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ聖堂まで続いていた。 

 サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ聖堂には1497年に出産で亡くなった ルドヴィーコの妻ベアトリーチェ・デステの墓がある。

 このトンネルは、ルドヴィーコが妻の墓に忍び込むためにこっそり利用したという伝説が伝えられている。

 ルドヴィーコは愛妻家で、妻が亡くなると狂気に近いほどの深い悲しみに陥り、その喪失感が数年後の彼の没落につながったと歴史家は述べている。

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 だが、そのようなトンネルはこれまで見つかっておらず、ただの伝説に過ぎないと思われていた。

ルドヴィーコ・スフォルツァ public domain/wikimedia[https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Ludovico_Sforza_by_G.A._de_Predis_(Donatus_Grammatica)_crop.jpg

最新技術で地下トンネルや空洞を発見

 ミラノ工科大学の研究者たちは、地下トンネルのありかを探るため、地中レーダーでスフォルツァ城の地下をマッピングした。

 地中レーダーは、地中に電磁波を発してそれが跳ね返ってくる信号から、地盤の密度、土壌の組成、空間スペースを割り出す。

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 目的は、デジタルツインを作ることだ。デジタルツインとは現実世界の物体から集めたデータを使って、仮想空間上にまったく同じ環境を再現する技術のことだ。

 これによって城の現在の外観だけでなく、過去を探索することができ、目で見ることのできない歴史的要素を復元できるという。

 こうした最新技術を駆使した詳細な調査の結果、地下30~60cmの深さに複数の地下空洞やトンネルがあることがわかった。

 ダヴィンチが描いたスケッチのトンネルは本当にあったのだ。

 研究者たちは、ルドヴィーコが亡妻の墓に忍び込むためのトンネルだけでなく、防衛や軍事目的で使われた通路もあると考えている。

 研究チームは、「スフォルツァ城は単なるモニュメントではなく、過去の歴史や人物の物語を秘めた場所だ」と語る。

 スフォルツァ城の地下通路は、今後さらなる調査が行われる見込みだ。この場所がかつてどのように使われ、人々の生活や歴史にどのような役割を果たしたのか、その詳細が明らかになる日も近いだろう。

References: Ground penetrating radars reveal new secrets under Sforza Castle in Milan - polimi[https://www.polimi.it/en/research/news/detail/ground-penetrating-radars-reveal-new-secrets-under-sforza-castle-in-milan] / Da Vinci was right: Secret tunnels found in Italian castle | Popular Science[https://www.popsci.com/science/da-vinci-castle-tunnel/]

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