
テレビ番組での発言を名誉毀損だとして世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に訴えられたジャーナリストで衆議院議員の有田芳生(よしふ)氏が1月23日、こうした旧統一教会による訴訟が言論封殺を目的とする「スラップ訴訟」だとして、家庭連合などに1100万円の損害賠償を求める裁判を東京地裁に起こした。
●テレビ番組の発言で提訴され訴状などによると、有田氏は2022年8月、日本テレビの番組「スッキリ」で、国会議員と旧統一教会との関係について「霊感商法をやってきた反社会的集団だってのは警察庁ももう認めているわけですから、そういう団体とは今回の問題をきっかけに、一切関係をもたないと、そういうことをあのすっきり言わなきゃだめだと思うんですけどね」などと発言。
家庭連合は同年10月、この有田氏の番組内での発言が名誉毀損に当たるとして、有田さんと日本テレビに2200万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求めた。
東京地裁は2024年3月に、東京高裁は同年12月にいずれも家庭連合側の訴えを退けた。
これに対し、有田氏は今回、家庭連合がこれまで裁判を起こすことで相手の自由な言論を抑えようとしてきたとして提訴した。
●スラップ訴訟「精神的、物質的な負担が顧みられてこなかった」有田氏の弁護団によると、家庭連合側による提訴行為が違法なスラップ訴訟だと認められるためには、裁判に勝つ見込みがないのに提訴したこと(客観的要件)と、提訴者が裁判に勝つ見込みがないことを知っていたかあるいは容易に知り得たこと(主観的要件)を満たす必要があるという。
提訴にあたっては、家庭連合のほか、その代表役員である田中富廣氏、顧問弁護士を務める福本修也氏を被告にしたという。
提訴後に記者会見を開いた代理人の澤藤大河弁護士は「今回の訴訟の意義は、スラップ訴訟を抑止して、表現の自由を擁護すること。組織の壁を越えて、スラップ訴訟を起こした1人1人の不法行為が問われるという前例をしっかり作っていくことで、違法なスラップ訴訟を抑止できるような判例を切り開いていきたい」と話した。
長年ジャーナリストとして旧統一教会の問題を追ってきた有田さんは、安倍晋三元首相が銃撃されて亡くなった2022年以降から家庭連合が訴訟という手段を活用するようになったと指摘。
訴状は「前件訴訟が提起された後、今日に至るまで、原告有田のテレビ出演の機会はまったくなくなった」としており、有田氏はスラップ訴訟が本人だけでなく社会的にも言論の自由を奪うことにつながる懸念を次のように訴えた。
「やってみればわかるが、裁判は本当に負担。スラップ訴訟は勝ったとしても終わればそれっきり。その間の精神的、物質的な負担が一切顧みられてこなかった風潮をどこかで歯止めをかけていかなければいけない。オウム真理教もそうだが、統一教会の問題は時間が経つと風化をしていく傾向があるので、ぜひ注目してほしい」
世界平和統一家庭連合は「記者会見の内容を確認した上で、今後の対応を検討させていただきます」とのコメントを出した。

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